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青翠と恋心2
巨大水槽の次はトンネル水槽だった。右も左も上も全部青。どこを見ても魚。
惚れ惚れしてしまう。
「颯太、エイだよ」
「おっ、下から見たの初めてだ」
上を見るとちょうどエイが通るところだった。
白い体の中に黒い穴みたいなのがいくつかある。丸い目にひき結んだ口みたいだ。
隣の颯太をふと見れば、水の光が反射してその瞳が輝いている。
エイも颯太も可愛い。
トンネル水槽をくぐりぬけ、熱帯魚の水槽やラッコなどがいる水槽の横を通っていった。
初めてだからどこを見ても楽しい。
そうして順路通りに進んでいくと、壁のない外気を感じられる空間に出た。
草木が生やされており、その中に水槽がある。沢をイメージしているのかもしれない。岩でできた低めの階段があるし、水槽で泳ぐ魚は淡水魚みたいだ。
閉鎖的な空間から少し解放された感じ。
久しぶりの風は心地よかった。
そして階段を上っていくとまた建物の中に導かれた。
そして少し通路を歩くと今度は大きなプールと半円形に並んだ客席が現れた。
プールの方は客席側から水面も水中も見えるようになっている。奥には人の立てそうなステージもある。
これは、もしかしなくても、ショーのための場所では、ないか。
テレビでしか見たことないけれど。
「亜樹、ちょうど今からやるみたいだよ」
「えっ」
颯太が看板を見ている。僕も覗いた。
どうやらここはイルカショーらしい。
好奇心がむくりとその身を起こす。
颯太となら、見たい。
「前の方行こうか」
「あっ、でも濡れる……」
「その時はその時だよ」
「颯太、わっ」
颯太に腕を引かれて前の方に連れていかれる。
客はまばらだから前の方は余計に空いていた。
二人で並んで客席に収まる。
「心が弾むね……」
「うん。あ、ほら亜樹。出てきた」
プールに目を向けるとステージに係りのお姉さんが出てきたところだ。
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