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青翠と恋心3
お姉さんがステージの真ん中に立つと同時に軽快な音楽が鳴り始めた。まだイルカは出てこない。
するとお姉さんが腕を上に上げる。
次の瞬間、イルカが水中から真上に三頭飛び上がる。
会場がわっと湧いた。
ジャポンと水を跳ねさせて水中に戻ったと思ったら、今度はステージに上がる。
ヒレで体を回転させると、僕らの方に顔を向けた。
「今日はよろしくお願いします!」
お姉さんが一音一音はっきり言って、頭を下げる。するとイルカもそれに合わせて顔を下げ、ヒレは上げる。
お姉さんが頭を上げるとイルカも上げ、また下げるとイルカも下げる。
三頭同時にそれをやるからすごく可愛い。
「可愛いね、颯太」
「そうだね。ショー見てる亜樹も可愛いよ」
「……そっ、そういうの今いい」
横にいる颯太に微笑む。するとそんな返事を返してくるもんだから、頬を染めて目をそらす。
その行動に颯太は小さく笑った。
プールに視線を戻すと、イルカが水中に帰るところだった。
次は何をするのだろう。
ワクワクしながら次の動向を見守る。
お姉さんは腕を円状に大きく動かした。
三頭のイルカはそれに合わせてプールをぐるっと一周した。
僕らへの挨拶と言ったところだろうか。
サービス精神たっぷりに三周ほど僕らに愛想を振りまくとステージの前で止まった。
今度、お姉さんが腕を前に向けてスイングする。
さすればイルカは猛スピードでこちらへ向かってきた。
あっという間にこちらへ来ると、今度はヒレで立つ。水中に浸かっているのはヒレだけだ。
水中では支える足場もないのにどうして立っていられるのだろう。ヒレの蹴る力がすごいのだろうか。
数秒間こちらにお腹を見せていたイルカは水中に戻る。それから三頭揃ってジャンプをしながらお姉さんの元へ行く。
次にお姉さんが取り出したのはボールだ。客席に見えるように掲げると、イルカに何か合図をする。
流れる曲のパンッて音に合わせてお姉さんがボールを投げる。一頭のイルカが飛び上がって、ボールを口で打つ。
戻ってきたボールをまたお姉さんが投げる。違うイルカが飛び上がった。
パンッパンッて音に合わせて何回かそれを繰り返す。
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