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青翠と恋心4

それが終わると今度、お姉さんが一頭だけ呼んだ。バランスを取りながらその背に乗る。 ぐるぐるプールを回って、最後にこちらへまっすぐ向かってくる。残った二頭は左右をプールの形状に合わせて泳いでくる。 同時に到着した三頭。 真ん中の子が真上にジャンプ。プールに飛び込むお姉さん。 「わっ」 「うわっ」 ヒレで水を飛ばす左右の子。 当然僕らに水がかかった。腕で顔を庇いながら、颯太と顔を見合わせて笑う。 「やっぱりかかった。颯太のせい」 「水も滴る何とやらだよ」 「自分で言う?」 くすくす笑って、また視線を戻す。 そのあともイルカとお姉さんはたくさん楽しませてくれた。 他の芸を披露してくれたり、水中を泳ぐ様子を見せてくれたり、飛んだり跳ねたり、時には水をかけたり。 颯太と何度も笑いながらイルカショーを楽しんだ。 「ありがとうございました!」 そしてお姉さんとイルカがまたお辞儀をして、それぞれステージの裏とプールへ戻る。客の拍手に見送られながら。 「はぁー、よかったね……」 「うん。面白かった」 半ば呆然として颯太と僕は呟く。 余韻の冷めた頃に颯太が先に立ち上がった。水に濡れた服の状態を確認してから、僕に手を差し出す。 「立てますか? 亜樹姫さま」 「な、な、何、それ……立てるもん」 顔が真っ赤になる。 子供扱いというよりお姫様扱い。何の脈絡もなくいきなりこういうことするのはすごく困る。何が姫だ。僕は姫なんか、絶対似合わない。 若干唇を尖らせて一人で立とうと思ったんだけど、視線は颯太の手に向いてしまう。 まるで王子のように手を差し伸べて、イケメンな顔が僕だけに向けられて。 「一人で……立てるからね」 小さく言って、颯太の手を取った。 手を重ねると冷たい空気の中で温かくて、思わず微笑んだ。 すぐに手は離れてしまったけど、その熱だけは鮮明に残った。

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