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閃々ラプソディ2
上半身が変に背後に倒れる。慌てて脚の位置を変える。
それから振り返った。
確かに僕の手は誰かに握られて、引かれている。
「颯太、だめだよ……こんな、とこで」
「とか言いつつ嬉しそうな顔してるよ?」
「……それは、仕方ない、もん……」
目立たないように颯太と距離を詰めて、繋がれた手を隠す。口では否定しているのに、掌の熱が幸せすぎて離せない。
「大丈夫。今日はどの人もお互いのことしか見えてない」
「でも……」
「それに顔だって近寄らなきゃ見えないしさ。イヴの日くらい、いいんじゃない?」
「…………ほんとは、繋ぎたい」
「俺も」
見つめあって微笑み合う。
……キスは流石にできないけど、甘くて溶けちゃいそうな空気。
さりげなく恋人繋ぎに変えて、ぎゅっと強く握る。秘密の共有はこの上もない幸福を呼んだ。
そうして僕らは公園内を進んでいった。
先ほど視界に入ったトナカイが道に沿って立てられている。まるでより大きな光の世界へ導いているようだ。
円の終わりで少し狭まった道を通って、先へ進むとバッと視界がひらける。
花畑や川を模したイルミネーションが広がっていて、道がふた手に分かれていた。
右を行けば細い一本道が続き、左を行けば雪の結晶や星などの光るオブジェが囲む道がある。
「どっち行く?」
「颯太はどっち先がいい?」
「じゃあ同時に指差そう」
「えっ、わかった」
確かにどっちかに選択を委ねるんじゃなくて、こういう決め方もいい。揃ったら嬉しさ二倍だ。
颯太の「せーの」という声に合わせて二本の腕が示したのは、
どちらも、細い道。
パッと顔をつき合わせる。
「同じだ」
「少し静かな感じするからでしょ?」
「うん、そうだよ」
「俺もだから」
どちらからともなく笑みを零して右の道へ。
右は板張りの人が二人通れるくらいの道だ。周りは川のように青いイルミネーションが埋めていて、オブジェだったり木だったり、視界を遮るものはない。
その見た目にあてられてか、人の数も少ない。夜と光を同時に楽しめる。
ギッギッて小さな音が板から聞こえる。息を吐く音も聞こえそう。
大きく息を吸ってみれば、冷たい空気が少し痛いくらい。
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