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サンタの降る夜1
僕も颯太も大満足の状態で公園から遠ざかっていく。
目を閉じれば今もまだあの煌めきが浮かぶ。
すごく美しく、夢のような場所で。形に残る思い出も残らない思い出もできて。
「亜樹、どうやってホテル帰る?」
「バスあるんだっけ?」
「あるよ」
おそらく歩きでも帰れる距離だ。でもこの気分を保ったままでいたいかも。
「じゃあ、バスーー」
白い息がほわっと漏れる。
視界に白いものがちらついたから。それは徐々に数を増やし、次々に空から降ってくる。
上空を見上げれば、白い粒で埋まる視界。
「雪だ……」
「ホワイトクリスマスだね」
「うん……」
手を広げると雪が落ちてくる。結晶は掌の熱で一瞬にして溶けてしまう。
雪なんて滅多に見られないから目を見張る。そういえば天気予報で大寒波が襲って日本全土で雪の可能性と言っていた気がする。
「歩いて帰らない……?」
「うん。そうしよっか」
まるで夢の世界に引き戻されたみたいだ。
僕のした提案は笑顔で受け入れられた。
手は繋がない。
でも、気分は同じ。
雪は僕らの要望を受け入れているかのように、止むこともなく、強くなることもなく、静かに降り続けた。
しんしんって言葉が合うのだろうか。
「積もるかな……」
「このぶんだと無理かもね」
「そっかぁ」
今だけの特別、か。
なんだか涙ぐみそうになる。
あまりにも綺麗で、綺麗すぎるから、急に手放したくないって思うんだ。
美しさの中では、一緒にいられることの幸福感が不意に襲って、胸を突き刺して。
「こうしていつまでも一緒にいれたらいいのに……」
以前の僕なら口にできなかったことも、今は小声で発してしまう。本当は言わないほうがいいとわかっている。
颯太はそんな小さな呟きも聞き取る。
いや、雪が音を乗せて、届けたのかな。
「何言ってるの。当たり前だよ。俺と亜樹はこれからはずっと一緒。そのためにあんなに頑張ったんだから」
「……うん」
「寒くて不安になっちゃった?」
「ううん、平気だよ。慣れない場所だからかな」
「そっか」
颯太は優しく笑って、僕の頭を撫でる。手に擦り付けるようにして頭を下げた。
この温かさがすごく愛しい。この笑顔がすごく愛しい。
颯太は僕に体を寄せてくれる。流石に触れ合ったりはしないけど、縮まる距離は嬉しかった。
こんな時間が、続きますように。
ううん、続けるんだ。
そうしてゆっくり時間をかけて、僕らはホテルへの道を辿っていった。
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