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サンタの降る夜2
ホテルに帰るとまず暖房を入れた。そして上着を脱ぐ。
「あー寒かった」
「結構歩いたもんね」
「そうだね」
歩いて行ける距離とは言ってもバスだって出る距離なんだ。雪にたぶらかされてしまって、結果凍えそうになっている。
雰囲気ばかりに流されてはいけないみたいだ。
ハンガーに上着をかけながらそっと溜め息を吐く。その息すらも冷たい。
頬も冷たすぎて感覚がないのではないか。
何かないかと旅行カバンを見に行く。中を漁ると紙袋に手が当たる。
「あ、そうだ。颯太」
「んー?」
振り返ると颯太は暖房に手をかざしていた。くつろいだ様子ではーあったかーなんて言っている。
「あのね、渡したいものがあるんだ」
カバンから自分で包んだプレゼントを取り出す。ネットで綺麗なリボンの作り方とかを探して頑張ってみた。
颯太は喜んでくれるかな。
気を遣ってテレビ前のソファに座ってくれた颯太。後ろ手にプレゼントを持ってそこまで行く。
「はい。誕生日プレゼント」
「……ありがとう。亜樹。すごく嬉しい」
「わっ」
用意してくれていたのが信じられないといったようだった。誕生日旅行なのだから驚く必要もないのに。
そしてくしゃっと笑って僕を強く抱きしめる。
プレゼントはまだ僕の手の中だ。
「先に受け取ってよ」
「ごめん。あまりにも嬉しいからさ」
抱擁をとかれてやっと颯太はプレゼントを手に取る。
「開けていい?」
「うん。もちろん」
僕は颯太の隣に腰掛けて、その様子を見守る。どんものだろうと颯太はきっと喜んでくれる。でもドキドキするんだ。それからワクワクする。
颯太がどんな笑顔を見せてくれるだろうかって。
リボンを丁寧に机に置いた颯太はまずマフラーを取り出す。
「マフラー……だね。買おう買おうと思って結局買いそびれてたんだ」
「やっぱり。いつも寒そうだったよね」
「うん。……どう?」
颯太は早速巻いてくれた。
上着を脱いだ状態だから少しの違和感はあるけれど、それを含めてもすごく似合っている。
ネイビーブルーが服全体の雰囲気を引き締めていて、所々覗くブルーが重すぎないようにしている。
「かっこいいよ……とっても……」
「俺もこのデザイン気に入った。ありがとう」
「よかった」
本当に嬉しそうに笑って、颯太はマフラーを畳んで机に置く。それから袋を持ち上げて、それも机に置こうとした。
「……あれ? まだ入ってる?」
そう言って颯太が取り出す。
もう一つのプレゼント。
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