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サンタの降る夜3

「これ……」 颯太は取り出したそれを目の前に持っていく。すぐ見えるように透明の袋で包装した。 僕があげたのはバングルだ。 全体は銀色で、途中が青になっていて、青の部分に星と月の模様が描かれているもの。つまり夜空がモチーフになっている。 「よく見つけたね」 颯太は静かにバングルをはめて僕に見せてくる。 細めのデザインだから男の人にも十分合っている。颯太がすると本当にかっこいい。 颯太の言葉に笑みを返す。 僕も自分でよく見つけられたと思う。こんな僕らにぴったりのもの。 「すごく嬉しい……これ見たらいつでも亜樹を思い出せる」 「……よかった」 颯太は手首に唇を持っていき、バングルにキスを落とす。伏せられたまつげがこの上もなく心を撫でる。 そして颯太は愛しそうにバングルを外すと僕を見る。 「俺からもプレゼントがあるんだ」 「わ、本当?」 「服なんだけどさ……向こうで着替えてきてくれる?」 「……服? わかった」 颯太はリュックから袋を取り出すと僕に差し出す。オレンジ色に緑のリボンだった。 颯太もプレゼントを用意してくれているなんて。自分が渡すことばかりで貰うことは予想する暇がなかった。 おもちゃを貰った子供のようにキラキラ光る瞳に見送られ、言われた通りドアの方、颯太の死角になるところまで行く。 ふるふる震える指先がオレンジ色のリボンを掴む。ちょっと力を入れれば、するりとほどけた。 喉を上下させ中を覗いた。 ……赤い。 赤と白。とある書籍名と違って赤と白だ。 クリスマスカラーということだろうか。覗く限りはこれ以外わからない。 でも普段は挑戦できない色だし、颯太のことだからセンスもいいはず。 やっぱりまだワクワクして、服を出す。 「……なに、これ」 思わず漏れる掠れた声。 いや、普通に意味がわからない。目の前の光景が信じられない。 だって出てきたのは、ミニスカサンタ服だ。 半袖に、服の縁にはふわふわの白い毛がついて、真ん中にボタンのような三個の白丸がつけられ。スカートは男物の下着は見えてしまうほど短く、ちゃんと赤の布と白いふわふわがあって。 百歩譲ってズボンのサンタ服ならまだ許せる。でもミニスカだ。ご丁寧に女物の下着まで。 あんなに瞳を輝かせていたのは、いたずらが成功するからなんだ。 僕が懸命にプレゼント選んだのが、さっきまでのあのワクワクが、馬鹿みたいじゃないか。 こんなの着られない。恥ずかしすぎるし、絶対……無理だ。

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