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サンタの降る夜4

「ちゃんと着てね〜」 タイミングよく颯太から声が飛んでくる。きっと見計らってたのだろう。 これでこのまま出て行ったら、颯太は残念に思うだろうな。これを渡してきたってことは、颯太は僕のサンタ姿を見たかったんだろうし。 それにプレゼントは、プレゼントだし…… これも受け取りようによっては颯太の想い、だし…… 本当に甘い。そんなのわかっている。 でも颯太が喜ぶ可能性があるなら、僕の腕は勝手に動いてしまうんだ。 この後に起こることだって予期できないわけじゃないし、死ぬほど恥ずかしいのもわかる。 でもそれ以上に颯太が好き。 颯太が僕の涙で驚くほど狼狽えるように、僕だって颯太の願いに驚くほど従順だ。 自分の着ている服を脱いでいく。パサパサ鳴る音は颯太に聞こえているかもしれない。 そう考えると余計に鼓動が早まった。 僕の身につけていたものが全て床に落ちる。そして改めてサンタ服を手に取った。 颯太のためって、小さな下着も履く。布の面積が男のものより少なくて心許ない。 それから上を着て、スカートも履いて。 全体的に短い。こんな面積の少ない服なんて、一度も着たことがない。 「……颯太、着たよ」 壁の角に手をかけて顔だけ出す。颯太はベッドに座って微笑んでいた。 ああ、やっぱりって心と、それでも構わないって心が同時に生まれる。 「見せて」 「……うん」 小さく息を吸って、颯太の前に全身を現す。 きゅっと目を瞑って、手はスカートの裾を掴む。 メイド服の次はサンタ服だ。颯太は女装が好きなんだろうか。それとも……。 「やっぱり似合ってる」 「……ど、どうして女装させたがるの」 恥ずかしさで目を潤ませ、颯太を見つめる。 不安で声が揺れた気がする。また泣かせたと颯太に思わせてしまうかもしれない。 「バイトの時は仕方なかったんだよ」 「そ、じゃなくて……颯太、いつも嬉しそうだから……」 違う。そんなの違う。 颯太がやっぱり女の方がいいなんて、ありえない。疑ってしまうのは、だめなこと。 でも颯太は僕が女装するたびにそういうことしてくるし、今だってそのつもりだろうし。ウィッグつけてない方が好きって言ってくれたのも覚えてるけど、あくまで服は女物で。 颯太はそんな僕に向かって微笑む。 「……おいで」 腕を広げられれば、飛び込む以外の選択肢はない。

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