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サンタの降る夜5

颯太はベッドに座って、僕は膝立ちで、ぎゅっと抱きしめてもらう。久々の体温は堪えていた涙を零させる。 ただでさえ不安定なところに不安の種が落ちれば、ぐんぐん成長してしまうものだ。 颯太のことは大好き。 だからこその不安定だから、解消されない。どん詰まりなんだ。 だからこれからもこんな面倒な不安を抱いてしまうかもしれない。 でも颯太と離れる選択肢はない。 「どうしたの? 今日はやけに不安そうだね」 「……幸せだから」 「嬉しいこと言う。あのねー……俺が亜樹に女装させるのは、まあ言っちゃえば恥ずかしがる亜樹を見たいから、なのかな」 すんっと鼻をすすれば、颯太の匂いが一瞬入ってくる。冬の香りが混ざったものだ。 「俺のために羞恥を乗り越えて着てくれたんだって気分上がるのも理由かな。とにかく女がいいわけではない。亜樹だから、いい。亜樹がするから、好きなだけ」 「……変態だ」 「ふふっ。亜樹のこと好きすぎる変態かもね」 颯太の胸に顔を埋めてるから声がくぐもっている。僕の吐息に颯太は少しくすぐったそうにした。 それから顎をすくって僕の顔を見る。榛色の瞳は澄んでいて、うっすら僕を映している。 「……ん」 「不安なら、消してあげる」 「んぅ、んっ」 キスをして、舌を絡めて。 その間に颯太は僕の腰を掴むと、そのままベッドに上げてしまう。横向きで寝転んだままキスは続ける。 颯太の唇は柔らかくて、温かい。幸せすぎて溶けてなくなってしまいそうだ。 本当にそうだったらいい。颯太と溶けあって一つになれるなら、ずっと一緒なら、それが一番なんだ。 「亜樹、好きだよ。大好き」 「僕も……」 キスの合間に言ってくる颯太に同じく返す。そしてまたキスを強請ろうとしたら、口を手で押さえられてしまう。 颯太を見てパチパチ瞬きを繰り返す。 「言ってくれないの?」 「……なに、を?」 「"僕も"の続き」 額を僕にくっつけて、口を覆った掌を頬に移動させる。 「言ったら、くれる?」 「ん?」 「…………キス」 「キスなければ言ってくれないの?」 「颯太……」 そっか。そう聞こえてしまう。 颯太のことは大好きだけど、言葉にすることは少ないかも。そして口にしようとすればこんな条件つけて。 泥沼にはまりそうな僕を颯太はぎゅっと抱きしめた。

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