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サンタの降る夜11
「ん……」
心地いい眠りから覚める。まぶたを持ち上げて、愛する人を視界に入れる。
……はずだったけど、いない。
「颯太……?」
布団を見てもどこにもいない。トイレか部屋の外の自販機とかかもしれない。
少し不安で体を起こす。
「いたっ……」
途端ズキンと痛む腰。
仕方ない。昨日あれだけシたのだから。何回かなんて僕は覚えていないけれど、とにかくたくさん。
左手を腰に持っていってさする。
「……ん?」
その時に何か腰に引っかかる。不思議に思って目の前まで手を持ち上げた。
「……なに、これ……」
瞳に映ったものが、信じられない。
指輪。
色々な角度から見ても指輪。細めで銀色のアームに小さな水色の石が埋め込まれている。その色は透き通るというより鈍い感じ。
なんていう石だろう。
じゃなくて、なんで僕が指輪をしているのだろう。
しかもその位置は左手の薬指。
「あっ、亜樹。起きた?」
「颯太……」
颯太がトイレとお風呂がある部屋から出てきた。上半身には何も身につけておらず、下はジーパンを履いていた。
指を目の前に掲げる僕の姿を、颯太は瞳の中に捉える。
「指輪見つけたんだね」
「あ、うん……」
嬉しそうに笑って颯太は自身の左手も僕に見えるようにする。その薬指にもちゃんと同じデザインの指輪がはまっていた。
まあ、そりゃ、犯人は颯太、だろうけど。
驚きで感情が麻痺してしまったみたいだ。うまく反応できない。
「誕生日プレゼント」
「えっ、でも……もう……」
「あんなのプレゼントにならないよ。強いていうならクリスマスプレゼントかな。てかプレゼントは相手が喜ぶものあげるもんでしょ」
颯太はけらけら笑って僕の隣に腰かける。そして手を下ろして呆ける僕を見てきた。
お礼も喜びも伝えたいのに、僕も見つめ返すだけ。
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