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サンタの降る夜12
すると颯太は僕の左手を取った。そして指輪を外してしまう。自分の左手からも指輪を取ると僕の右手に乗せた。
「本当は内側にイニシャル掘りたかったんだけど流石に無理だった」
口を薄く開けたまま照れ笑いする颯太から掌に視線を移す。つけている時は気づかなかったけど内側だけ深めの青色になっている。
すごく素敵なデザインだ。指輪の相場はわからないけど、高そうに見える。
わざわざ僕のためにこんな指輪を。
「はめてくれる?」
颯太の声にまた視線を上げる。それから下げる。
左手を持ち上げる颯太。僕は指輪を指先で優しく持つと、恐る恐る滑らせていく。
震えてしまって手間取ったけど、サイズはぴったりだから綺麗にはまった。
愛しそうに目を細めた颯太は次に僕の左手を取る。先ほど外した指輪が、またするすると指に戻っていく。
これはまるで結婚式みたい。二人だけの秘密の結婚式。
颯太は僕の指輪をはめ終わると、それぞれの手を握って持ち上げた。二つの指輪が見えるように、片方が表向き、もう片方が裏向き。
外の光に照らされて、淑やかに輝いている。
「働き始めたらもっといいの買うから、これは予約。亜樹の将来を、俺にくれる?」
颯太は僕に真剣な眼差しを注いで、柔らかく微笑んだ。
つまり、結婚という、こと。本当に結婚式の誓いってことだ。
僕が颯太のこれからを貰って、颯太が僕のこれからを貰って。
ずっと、一緒に、いるって、予約。
何か言わなきゃ。
でも結局は息を吸って吐いただけになった。
「……ありがとう。亜樹」
颯太はふって息を漏らして僕の頬を撫でた。
その理由は簡単だ。僕の目から涙が溢れてしまったから。
ぼろぼろ次から次へと流れて、目の前の颯太はもう歪みっぱなし。
そんな僕を颯太は抱き寄せてくれた。肌と肌が擦れる。颯太の胸はとても温かい。
「……一緒が、いい。ずっと……ずっと……」
「うん。当たり前。指輪でそれが形になったね」
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
こんな幸せなことってない。颯太がこんなプレゼントをくれるなんて、将来を具体的な形にしてくれるなんて。
ずっと一緒がいい。
そう思うなら、自分から掴みとればいいんだ。どん詰まりだなんて諦めないで、探せばいい。
颯太の素敵なプレゼントは、僕に勇気と希望をくれた。
そうして僕は颯太に夢中で抱きついて、颯太の背中を濡らし続けたのだった。
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