355 / 961
サンタの降る夜13
泣きやんだあともしばらく颯太に甘えてくっついていた。
背中に回される腕と、鼓動する心臓と、颯太にくっつけた頬から伝わる温もり。それが大好きで、幸せで、安心する。
もうチェックアウトの時間までこうしていたいくらいだ。颯太なら許してくれそう。
そうは思ったのだけど沈黙を切り裂く、ぐーっという音。
「あっ……」
「お腹すいた?」
「い、今何時?」
頬に熱が上っていく。
でも時間によってはおかしくない。そもそもあんな運動まがいのことしたのだから、お腹が減っても無理はない。
「十時」
「えっ! もうそんな時間?」
せいぜい九時ぐらいだと思っていた。朝食抜きだからお腹が空いているのかと……。
僕の起きる時間自体が遅かったみたいだ。
そっとお腹をさすっていると颯太が嫌な笑みを浮かべて僕を見る。
「亜樹が甘えんぼだったからかなぁ〜」
「うっ、違うもん……」
その顔を押し返してベッドを降りた。下着だけの状態だからそろそろ何か着たい。
旅行カバンを漁って今日着る予定だった服を取り出す。その際に視界に指輪が入って、思わず笑んでしまう。
一旦手を止めて改めて指輪を眺めた。
いつ見ても綺麗だ。颯太ってセンスいい。
「そんなに嬉しい?」
「ひゃっ」
颯太が僕の首筋に息を吹きかける。ぞわぞわっと背筋に悪寒が走った。
手で首を押さえて振り返る。
そういえば嬉しいってはっきり口にしてなかった。
「すごく嬉しい。今までで一番嬉しいプレゼントだよ」
「よかった」
「ずっと身につけていたいくらい」
でも無理だ。こんな若いうちから左手の薬指だなんて怪しい人みたい。淋しいけれど、颯太と出かける時だけかもしれない。
「ああ。それなら」
僕の沈んだ表情で察したらしい颯太は自分のリュックのところまで行く。中を漁って取り出したものをこっちまで持ってきた。
どうやらそれは銀色のチェーンのようだ。颯太は自分の指輪を外すとチェーンに通す。それを首に回せばあっという間にネックレスだ。
僕の指輪も外して同じようにしてくれた。それからわざわざ首につけてくれる。
「こうしたら身につけやすいんじゃない?」
「うん。素敵」
首のひんやりとした感触。
チェーンをたどってその先の指輪を見つめた。
「まあ指輪として使いたいなら別の指につけたりとかすればいいし」
「うん。ありがとう」
颯太に向かってニコッて笑う。
引き締まった体に指輪がよく似合っていた。ほぼ裸のくせにかっこいいとは、やっぱり自慢の恋人だ。
「さっ。着替えてお昼食べ行こう」
「うん。そうだね」
ともだちにシェアしよう!