362 / 961
あけまして1
クリスマスが終わればあっという間に大晦日がやってくる。
今日は母さんの勧めもあって颯太は僕の家で過ごすことになっている。
母さんは流石に今日と三が日あたりは休みらしい。ゆっくり休める日なのにわざわざ颯太も招いてくれるなんて優しい母だ。
「亜樹のお母さんの手料理楽しみだな」
「僕も久しぶりに食べるや」
母さんはせっかくだからと料理を作ってくれるらしい。僕も颯太も止めたのだけどたまにはいいでしょって聞かなかった。
そして今、僕と颯太は頼まれた買い出しから帰っているところだ。
「母さん、休まなくていいのかな……」
「たまの休みだからこそ誰かのために使いたいのかもよ。亜樹と同じで他の人のために何かするの好きそうなタイプでしょ」
「そう、かなぁ……」
間接的に僕のことまで言われてポッと頬が染まる。
まあ、でも母さんの休日だから、母さんがしたいことをするのが一番だ。外野が口を出すことではない。
袋をがさがさ言わせながら僕と颯太は家に帰りついた。
「ただいま」
「おかえりなさい。二人ともありがとう」
母さんはキッチンで何やら先に作っていたようだ。そこへ僕たちが買ってきた食材が足される。
食材以外も頼まれていたから、母さんはそれを素早く分けた。僕もなかなか家事は手慣れていると思っていたけど、主婦は手さばきが違うってそれだけの行為で感じた。
「何か手伝いましょうか」
「そんなのいいのよ! 二人で亜樹の部屋行ってて。私が作りたいだけだから」
少しの時間も惜しいと言わんばかりに僕と颯太は母さんの手によって部屋に押し入れられた。
二人ぽつんと部屋に残った。あまりの早さに唖然としてしまう。
母さんは昔からせっかちで、いつも忙しいのが好きってタイプだから無理もないか。
「久しぶりに窓で話さない?」
「え……うん」
颯太に手を引かれて窓まで行く。カラカラとそこを開けて、僕が右、颯太が左に腰かければ、懐かしい定位置が蘇る。
今はお互いの家を行き来しているから、夜中に会うことは殆どない。それは少し淋しくもあった。
「前は毎夜ここで話してたよね」
「うん。出会ったばかりの頃だったよね」
「もう……半年以上前になるんだ」
「懐かしいね、コウ」
「やめてよ、それ」
颯太はあの時の罪悪感を思い出したのか、苦笑いする。
あの頃の僕は『コウ』のことばかり考えていた。それに間宮颯太は極悪不良だと思っていたし。
今となっては全部笑い話だ。
「コウだった頃はまさか亜樹とこんな関係になれるとは思ってなかったよ」
「僕だって……両想いになれるなんて、思わなかった」
ちらりと隣に視線を向ければ、颯太の首元で光る指輪が見えた。そこから視線を上げていく。
「少し早い気もするけど来年もよろしくね」
「……うん」
はにかんで返事をしたら、唇がそっと重なった。
ともだちにシェアしよう!