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あけまして3
「ねぇ、颯太くん」
「はい」
「亜樹はどう〜? 控えめすぎて嫌になったりしてなぁい?」
「そういうのは本人がいないところで聞いてよ……」
なんてことを聞くんだ。僕だって自分のこの性格は気にしているのに。
颯太を見ると楽しそうに笑んでいた。
「嫌になるわけないですよ。そういう部分も含めて亜樹ですから。そもそも最近はそうじゃなくなってきてますし」
「へぇ〜、そうなのね。よく見てるわねぇ……」
「あの、母さん……」
「じゃあ〜、迷惑とかかけてない?」
止めようと思っても母さんは僕を見ることすらしない。ほんのり頬を染め、颯太をじっと見つめている。
僕は一人でハラハラして颯太と母さんを交互に見る。
「一緒に生きるって迷惑かけあってなんぼだと思いますよ。ただ亜樹は迷惑かけてきたことないですね」
「本当に何から何まで模範解答ねぇ……こんないい人、亜樹よく捕まえたわね」
「だから母さん……」
「俺が必死に捕まえたんですよ」
「颯太もっ……」
母さんがやっと僕を見たから窘めようとしたら、この状況を楽しんでいるのか颯太がふざけたことを言う。
「あ、じゃあ〜……亜樹と颯太くんなら、どっちがお嫁さんで、どっちがお婿さん?」
「ちょっ……!」
母さんはそういう類のことを知っているのか。その……どっちが女役で、それからしていること、とか……
僕らのために同性同士のことを調べてみたりして、目にしたとか。
とりあえずこの問いには答えなくてもいい。
颯太に目を向ける。困った顔は露ほども見せていない。
あ、これは答えるつもり……
「同性なんでそういったことにあまり縛られないんですが、普通に考えると亜樹が嫁で、俺が婿だと思います。ね?」
「……颯太」
「やっぱりねぇ〜! 亜樹は頼もしいって感じじゃないものね。顔も女の子みたいだし!」
「顔は気にしてるんだからやめてよ……」
「え〜、可愛いですよね」
「そうよねぇ〜」
「颯太ものらないで!」
トントン二人が会話を進めてしまう。二人しらて僕をからかって。
颯太だって両親の前で赤裸々なことを話されたら恥ずかしいだろうに、絶対面白がっている。あとで僕が怒るのも面白がるつもりだ。
いい加減、母さんを止めなきゃと思って母さんを改めて見る。やっぱりその頬は赤い。
颯太がかっこいいし、息子の恋人だし、ただ興奮しているのかと思っていたが。
「……母さん、もしかして酔ってる?」
「酔ってないわよぉ〜。作っている最中にちょこっと飲んだけどね」
母さんの後ろにあるキッチンを覗き見る。そこにはビール缶が数本転がっていた。
ちょこっとのレベルではない。でも酔っていると考えれば母さんの発言の説明はつく。でもわざわざ颯太が来る日に飲まなくてもいいのに。
……いや、飲まないと口に出せないこともある、ということか。
「俺が知っていることなら何でも教えますよ、亜樹のこと」
「あら、じゃあどんどん聞いちゃおうかしらぁ」
「やめてよ、二人とも……!」
口では止めたが、母さんの楽しそうな笑顔を見れば、たまにはこういうこともいいかと思えた。
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