365 / 961

あけまして4

大晦日の夜はいつもより静かな気がする。 僕の小さな布団に無理やり二人で入る。 二人暮らしが長いから布団がもう一つあるはずもなかった。母さんは申し訳なさそうだったけど、僕らにはもうこれが当たり前だ。 こんなこと口が裂けても言えないけど。 「やっぱり狭いね、僕の布団だと」 「俺のベッドも大差ないでしょ」 「そうかも。それにもう慣れたよね」 「そりゃあお互いの家に何回泊まったかって感じですから」 「そうですね」 暗闇の中、母さんにばれないよう顔を寄せてぼそぼそ話すのも、なかなか楽しい。 颯太の腕が腰に回る。お尻に向かったそれをぺしっとはたいた。睨むふりをすると颯太は綺麗に笑う。 「あ、颯太」 「んー?」 むにっと颯太の両頬を掴む。意外に柔らかい。 それを外側に向けて引っ張る。 「いひゃいよ、あひ」 「ふふ。お仕置き」 「なんへ」 「散々からかったから」 ビールを飲んだ母さんはあの後、どんどん気分が高揚してしまった。食事が終わっても勢いは止まらず、颯太だって調子に乗って色々話した。 話題は僕のくせに颯太は僕を全然構ってくれなかったし。 これくらいはする権利があるはずだ。 何回か同じことを繰り返した。颯太は大人しく僕にされるがままだった。腰の手も動かない。 気が済んだところで手を離し、颯太の胸に埋まる。 「あー、痛かった。頬伸びたらどうするの」 「知らない」 颯太は自分の頬をさすりながら、僕の頭も撫でる。こうして颯太にくっついているときは、僕が颯太を独り占めできる。 「拗ねてる?」 「……颯太、母さんに僕のこと話してばっか」 「ごめんね。亜樹のこと大好きだから誰かに話したくなっちゃうんだよ」 「……ずるい、そういうの」 「自慢のお嫁さんだからさ」 反省しない颯太の胸にぐりぐり頭を擦り付けてやった。痛くたって知らないんだから。 颯太の片手が腰に回り、頭を撫でる手もまだそこにある。そしてつむじにキスをされた。 「……僕のお婿さんも自慢だもん……」 胸で口を隠してくぐもった声で言う。 聞こえたのかは知らないけど、颯太はぎゅっと抱きしめてくれた。 僕も背中に手を回してきゅっと服を掴んだ。

ともだちにシェアしよう!