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あけまして6
行列は長すぎて普段なら飽きてしまうところだけど、颯太がいたから今回は退屈しなかった。
颯太となら他愛ない話ですら楽しい。
そしてあっという間に行列の一番前に来ていた。
縁起が良さそうだからと、僕は五円をお賽銭箱に投げた。そして颯太と同時に二礼二拍手。
それから手を合わせてお願いごと。
目を開けるタイミングは颯太と一緒だった。一礼してそこを離れる。
「亜樹は何願った?」
「秘密だよ」
「えー」
お願いごとって人に言うと効果がなくなると聞いたことがある。絶対に叶って欲しいから颯太に強請られても、何があっても、言わない。
文句ありげな颯太から逃げるとちょうどおみくじが視界に入る。
少なくとも初詣でおみくじを引いたことはないが、実は引きたいと思っている僕。颯太はおみくじに興味あるだろうか。
「颯太……おみくじ、引かない?」
「ん? おお、いいね。行こう」
「……うんっ」
箱に百円を入れて、中から一つだけ取り出す。ドキドキして中身を見る。
目に入ったのは……『凶』。
不吉だ。物凄く不吉。
まず恋愛を見てみる。『今この時を大切にせよ。』と書いてある。
学業は『迷いの先に答えあり。』だ。
それぞれどちらもやっぱり不吉だ。
「俺は吉だったよ。恋愛は『この人となら幸せあり』だって。亜樹はどうだった?」
「んと……凶、だった……」
「出産のところなんて書いてある?」
「え? えっと……『産子に難あり』って」
「あー、そっかぁ……じゃあ子供はまだだね」
悔しそうに笑顔を浮かべる颯太をきょとんとして見つめる。だけど意味がすぐに理解できてボッと顔が火を吹いた。
「な、何言って……! 子供なんてっ……僕産めないよ……!」
「亜樹なら平気だよ〜」
「〜〜っ! ばかっ……」
「ごめん、ごめん。ほら甘酒飲みに行こう」
絶対今の颯太はえっちなこと考えていた。そう思うとますます顔が熱くなる。
唇を噛んでいると颯太は僕の腕を引っ張った。
「大丈夫。俺が吉なら亜樹だって吉だよ」
赤くなった顔に笑顔が足された。
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