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憂懼か百福か1

二人仲良く歩いて颯太の家まで行った。颯太がさっさと玄関をのぼりドアを開ける。 「久志さーん」 僕もその後ろについていった。颯太の背中からちょこっと顔を覗かせる。 久志さんはすぐにリビングのドアから顔を出した。 「亜樹ちゃんち行ってたんじゃねぇの?」 「初詣の帰り。久志さんも家帰るんでしょ? 乗せてってよ」 「いいぜ。ちょうど出ようとしてたとこだ」 一旦引っ込んだ久志さんは車のキーを持って出てくる。 そういえば久志さんの車に乗るのは初めてだ。 ホワイトのかっこいいデザインの車。きっと中もかっこいいのだろう。 久志さんが運転席に近づくと自然と鍵が開いた。 「亜樹ちゃんは助手席乗れよ。颯太は後ろな」 「えっ」 「は? 俺と亜樹が後ろだから」 「可愛い子が隣にいると事故んないだろうなぁ」 「おっさんの場合、逆でしょ」 颯太に腕を引かれて後ろの席に押し込まれた。そして颯太も隣に乗り込んでくる。久志さんから守ろうとしてかぴったり密着してきた。 車の中に装飾品等は何もなかった。汚れもないし、いつも整理整頓しているのだろうと察せられる。 「んじゃ行くぞ」 さっとシートベルトをした久志さんは車を発進させる。 久志さんの雰囲気から勝手に荒い運転が似合いそうだと思っていたけれど、いたって安全運転だった。心地よい振動が体に伝わる。 僕は颯太に体を預けて到着を待った。 そんなに時間はかからずに九条の家に辿り着いた。 久志さんが門の前で車を一時停止させると自動で門が開く。見慣れないものだからついついじっと見てしまった。 なんで僕はこんなところに入れているのだろうと不思議になってくる。完全に世界が違う。 久志さんは再び車を動かして門の中に乗り入れた。そのまま前庭を走り抜け、駐車場に停車させた。 駐車場には車が何台か停まっていた。中には高そうなものもある。もしかして全て颯太のお父さんの持ち物だったりするのだろうか。 「車気になる?」 「たくさんあるなぁって」 「あれは執事の方とかの車も混じってるよ」 「そうなんだ」 颯太のお父さんは現実的な人だから車は一台あれば十分だとか思っていそう。 「早く出ろー」 「あっ、はい」 「はーい」 シートベルトを慌てて外して車外に飛び出す。そして久志さんを先頭に歩き出した。

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