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憂懼か百福か11

時間がかかることを見越して後に残しておいた数学のテキストと睨めっこをする。 今はお互い少し課題が残っていたからやってしまおうというだけ。それが終われば終了だ。 出先で勉強っていうのもいまいち集中できないし、三が日だし、少しくらい休んでもバチは当たらない気がする。 いや、冬休み中に旅行に行っている時点で勉強量は足りなくなっている。だがそれは大目に見るとして……。 余計な思考はわからない問題が出てきたから。素直に颯太のところへ行く。 「颯太、この部分さ……」 「んー? これはね……」 颯太はまるで先生のように、寧ろ先生よりわかりやすく教えてくれる。 颯太の手助けがあって僕はいつもより早く終わり、僕の要請が入って颯太はいつもより遅く終わった。つまりほぼ同じ時間で終わった。 「颯太、今何時?」 「十一時」 「もうそんな時間か……」 「全然眠くない」 「僕も」 これでは生活リズムが崩れそうだ。それは勉強にも影響が出てしまう。 おのれ昼寝め。 そう罵って見るが、本当は負けた僕が悪い。 「亜樹こっち」 「ん?」 「ベッドいれば眠くなるかも」 颯太はやけににこにこと嬉しそうに笑いながらベッドを叩く。 僕の考えの範疇を超えて機嫌がいいことなんてままあるから、特に気にせずに一緒のベッドに入った。 冬だけどその中は温かい気がする。颯太効果かな。僕はぎゅっと颯太に抱きついた。 そして穏やかな眠りが訪れ……ない。 「颯太、寝た?」 「いや全然」 そう。全然眠くならない。条件は揃っているのに本当に眠くなかった。 そこまで昼寝の威力は強大だったということか。 「やっぱ昼寝のせいだ」 「そんなこんなで日付を越えた」 「えっ、もう?」 「うん。やっと」 「……へ?」 噛み合わない言葉。 そこで僕の脳がやっと先の笑顔に警報を鳴らす。 案の定、僕は押し倒される。 「亜樹、知ってる? 姫始めって二日以降じゃないとだめなんだって」 「ひめ……はじ、め……?」 「新年最初のえっち」 「じゃあ、まさか」 「うん。亜樹の思った通り」 颯太の笑顔が怖い。ここまで全部仕組まれていたのかと思うと、もっと怖い。いやまあ確かに最初から言っていれば僕は物凄く抵抗しただろうけど。そもそも部屋に行かなかったろう。 でも一方で結局は折れることもわかっているだろうから、単に僕の怯える表情を見たかったのだろう。 「だ、だめだよ、こんな、だめ」 「ごめんね」 一応の抵抗はあっさり破られた。

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