381 / 961

憂懼か百福か13

「颯太さま、起きていらっしゃいましたか」 「うん。どうしたの?」 「どうやら小動物が侵入したらしく、お部屋を回らせていただいています」 「そうなんだ」 颯太は見回りの人と話しながら僕を見る。そしてニヤッと笑った。 それの意味することがわかって僕は目を見開く。いやいやと首を振るが颯太は無情にも、腰の動きを再開する。 「んっ、ンンッ……」 「睡眠をお邪魔してしまいすみません」 「いや寝てなかったから平気」 「ンゥ、んっ……」 「左様ですか。お勉強ですか?」 「んーん。違うよ」 「あまり夜更かしなさらぬよう。お体に悪いですから」 「はーい」 よかった。もう終わる……。 そう思ったのにまたもや颯太がにやりと笑う。そして僕の腕に魔の手を伸ばす。懸命に力を込めたけど颯太に敵うはずもない。 「ひっ……!」 腕を剥がされた瞬間、ズンと奥を突かれてしまった。 羞恥を通り越して涙が滲む。もう遅いけれど手だけはすぐに戻した。 「颯太さま? 何か聞こえませんでしたか?」 「俺は聞こえなかったよ」 案の定、今の声は見回りの人に聞こえてしまっている。どうしよう、不審者かなんかだと思って部屋に押し入ってきたら。 もう終わりだ。颯太だって終わりだ。なのになんで自分から悪いことを招くようなことをする。 「でも……もしかして中に何かいらっしゃるのでしょうか?」 「……いや、いないよ。食堂とかどう? 足音忍ばせて行けばさ」 「……なるほど。ありがとうございます。では失礼します」 「おやすみ」 見回りの人が去る時間をたっぷり取ってから腕を外す。息を吐こうとしても吐けず、慌てて吸った。 それから涙を零す瞳を颯太に向けた。 バレなかったけど、どうしようもなく悲しくて、恥ずかしくて。 珍しく腹立たしい気持ちもあるかもしれない。情事の時にはまず抱くことはないのに。 「颯太、何考え……ひぁっ! あ、アアッ」 「つい意地悪したい気持ちが、ねっ……」 「あぁん、あっ、あぁっ……!」 涙を流し、快楽に溺れ、僕は結局行為を続ける羽目になった。

ともだちにシェアしよう!