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イシュー1
三が日が過ぎればほんの数日ですぐに学校が始まる。夏休みに比べて冬休みって圧倒的に短い。
冬休み明けのテストを乗り越えたら僕らに待っているのは修学旅行の準備だ。冬休み明け初めてのロングの時間が班決めだ。
それは今日。ついでに二者面もするらしい。
僕はそわそわしながら隣の颯太の袖を掴む。
「颯太、班決めどうしよう……」
クラスに受け入れられたとはいえ僕も颯太も班を組むほど仲良い人が多いわけではない。そもそもいつもお互いばかりで交友関係を広げる努力をしていないというか。
「んー、六人だからあと四人だよね……。清水くんなら組んでくれそう」
「そしたら松村くんも一緒になりそうだけど……清水くんたちは他に組みたい人いそうじゃない?」
「あーまあ……でも亜樹のとこ来るんじゃないかな」
颯太の言葉に疑問符が浮かぶ。
どうして颯太はそんなに確信が持てるのだろう。水族館の時もそうだった。
人との付き合いが僕より断然多いから、行動パターンが読めたりするのだろうか。
……そういえば颯太は本来、清水くんのような立ち位置にいることができる人なのに、僕がそれを阻んでしまっている。
颯太の可能性を潰しているとでも言えばいいか。僕が変われば、颯太もあるいは……
「亜樹、何考えてるの」
「えっ……とりとめもないことを……」
「どうせまた派生して沈むようなこと考えてたんでしょ」
「ち、違うよ……」
「いつも考えすぎって何度言ったらいいのやら」
簡単に性格を変えるなんて無理だ。流石にそんなのわかっているし、いくらあれこれ考えたとしても僕が颯太といるのも変わらない。
時間の浪費って僕の思考にぴったりの言葉だ。
心の中で溜め息をつき、ふと顔を上げる。
「あ、松田先生来たよ」
相変わらず猫背な松田先生が教室に入ってきた。
こんなだらしない様子でも生徒の信頼は厚い人だ。もちろん僕も好き。
「朝言った通り修学旅行の班決めを適当にやっててくれ。それから朝倉は二者面」
「はーい」
出席番号一番の朝倉くんが松田先生と共に教室から出て行った。その途端、教室はざわめきに包まれた。
組もうぜ〜!なんて声があちこち飛び交う。
清水くんを見ると、颯太の席の二つ前、松村くんの席に行っていた。早速組んだみたいだ。
それを見ると清水くんたちはやはりサッカー部のもっと仲良い人と組んだ方がいいと思えてきた。
颯太と一緒ならそれでいいし、欲張るつもりはないから、誰か他の人を見つけないと。
「わったらい〜! まっみっや〜!」
一人でおどおどしていると松村くんが変な節をつけて僕らに近づいてきた。声に合わせた不思議なステップもおまけでついてくる。
「組もうぜ!」
「えっ……いいの? サッカー部の人とか……」
「あいつらとはいつでも一緒だから、間宮と渡来と一緒がいいなって! な、蓮!」
「ああ。俺も渡来と間宮と組みたい」
松村くんはニッと僕らに歯を見せる。それから清水くんを意味ありげに肘でつつく。清水くんはそれを押しやり、僕らに視線を向けた。
これも颯太の言った通りだ。口を半開きにしたまま隣を見る。それからまた前を見る。
「僕も清水くんたちと組みたいな……」
「おい、そこは清水くんと松村くんって言えよ!」
「あっ、ご、ごめん……」
松村くんのツッコミにピクッと体を震わせる。
怒って、ないよね……。うん、松村くんはふざけ役だから、単に声が大きいだけ。元気なだけ。
「茂、あんまり強く言うな」
「松村くん、亜樹を怯えさせないで」
だけど清水くんと颯太は即座に松村くんを注意する。それに思わず笑いを零した。
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