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イシュー5

最近の学校生活はどこか修学旅行前のそわそわ感が漂っている。 判別行動はそれでいいか審査が入るから、約一ヶ月前に準備を始めるのは仕方ないことだけど、焦らされてる気分にもなる。僕はわくわくが長く続いていいと思うけれど。 飛行機やバスの座席、クラス別行動の行き先、ホテルや旅館の部屋決めなど、その間に様々なことを決めた。 ちなみに僕はちゃんといつでも颯太と一緒。飛行機、バスは隣だし、一日目のホテルは二人部屋で颯太と、旅館は六人部屋だから班ごと。 あとは他の細かいことなり、学年集会なり。 「ねぇ、渡来くん」 「小室くん……?」 修学旅行のことをいろいろ考えていたら横から小室くんが声をかけてくる。颯太は今、席を外している。 班で話し合う中で、小室くんはマイペースで緩やかな人だとわかった。 それを轟くんが引っ張る感じ。まさに幼馴染って感じだ。 小室くんはちょうど空の颯太の席に腰かける。 「間宮くんと……付き合ってるんだよね?」 「えっ、う、うん」 びっくりして目を丸くしてしまう。 だが小室くんは少しずれているというか、悪気があって色々なことをやる人ではないということもわかったから、素直に答えてみる。 もはやクラス中にバレているも同然だし、そのおかげで何かと颯太と一緒にしてもらえるし。 「そうだよね〜。二人見るからにラブラブだもん」 「あの、小室くん……」 「じゃあさ、間宮くんとどんなところ遊び行ったりする?」 「え、えーと……動物園とか水族館とか、普通に街ぶらぶらしたりとか……色々するよ」 「ふむふむ、なるほど〜」 小室くんの意図が読めない。ふわ〜っとした感じの人だからどういう思考回路をしているのか掴めなかった。 最初に僕と颯太と仲良くなりたいと言っていたからこれもその一環なのだろうか。でもわざわざ恋人の僕と颯太に限定するのはおかしい。 「あ、もしかして小室くんも付き合ってる人がいるの……?」 「え?」 「だから色々聞きたいのかなぁって」 「……ううん。二人へのただの興味だよ〜」 「そうなんだ」 小室くんは垂れ目を細めてニコッと笑う。どこか猫みたいで可愛らしい。 少しの間が気になったけどこれもマイペースな小室くんだからなのだろう。 颯太のいないところで誰かと会話をなかなかないから、自分に多少の誇らしさと、純粋な楽しさを感じる。 「あっ、そういえばさー、七月? に間宮くん急にまた学校来なくなったじゃん? あれってなんでか知ってるの〜?」 「あれは……」 「また不登校に戻りかけたとか?」 「え、あ……」 「もったいぶらないでよ〜」 小室くんはただ楽しそうに喋る。対して僕は冷や汗をかきそうだ。 九条とのあれこれは流石に話すわけにはいかないだろう。颯太だけでなく柊先輩にも迷惑がかかってしまう。 ただ返事をするにも僕の一言で颯太の印象が変わるかもしれない。そもそも堂々と嘘をつくのは申し訳ない気もするし……。 ニコニコしている小室くんを見て、ますます焦りが募る。

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