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いざ沖縄1
浮き足立った日々は急速に過ぎていって、気づけば修学旅行初日になっていた。
もちろん颯太と一緒に学校へ向かう。
集合時間は七時半だから空は仄かに明るくなっている。きっと今日は晴れだ。あっちも晴れだといい。
「あったかいのかな、沖縄は」
「ブレザー脱いでも平気くらいの気温がいいな」
「俺もそれがいいや」
はぁっと息を吐くと水蒸気が水滴に変わる。
沖縄では白い息って見えるのだろうか。気になるのは気温ではなく、空気中のごみの方。空気が綺麗なイメージはあるが、人がいる時点でそれは難しいのかもしれない。
「この少し早めの朝の雰囲気、好きだな」
「僕も好き。静かな感じが……って、颯太」
「ん?」
嬉しくなって颯太を見る。今日はマフラーをしていないから首筋が見える。そこに一瞬の閃きを見たような……。
「指輪つけてるでしょ」
「バレた? 折角だし持っていきたくなって。怒らないでよ、亜樹。今更戻れないし」
颯太が僕のご機嫌をとるように頬を撫でる。僕はその手に自分のを重ねた。
普段から校則は必ず守る人間だから僕が怒ると思うのだろう。僕の場合、真面目というか臆病なだけだけど。そして前までの僕ならだめだよ、外した方がいい、くらい言っていたかもしれない。
颯太に微笑みかけながら片方の手でカバンを探る。
「おあいこ、だね」
そして指輪のケースを颯太に見せる。
特別な時間だし、少しくらい大丈夫かなって思ってしまった。常に近くに置いておきたい。あわよくばどこかに身につけたい。
「なんだ亜樹も」
颯太は顔を綻ばせると僕のブレザーに手をかけた。ボタンを全て外し、ネクタイに手をかける。それもしゅるりと少し緩めた。ワイシャツの一番上のボタンも開ける。
「颯太……? なにして……」
羞恥というより困惑。いやだって誰も道端で何かするなんて思わない。
颯太は次に僕の指輪を取り出すと、ケースに一緒に入れているチェーンを取り出す。
「どうせならお揃いでね」
颯太の手が首に回って、指輪が僕の首に下がる。そのままその手は服を元どおりにする。
襟の上からチェーンのあるあたりを触ってみた。僕は制服のボタンを全部閉めてネクタイもきつく締めるから絶対に見えないと思う。
今度はブレザーの隙間から手を入れて胸のあたりをワイシャツの上から触る。
伝わってくるのは固い感触。
「亜樹、それえろいね」
「ち、違うよ。そうじゃなくて……」
「ほらほら、学校行こう」
「あっ、手はだめ」
颯太は僕の手を握って歩き始める。それを外すと慌てて隣に並んだ。
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