392 / 961

いざ沖縄3

「おら、やめろって、凛。ごめんな、渡来。こいつ気に入ったやつにはスキンシップ激しくなるんだよ」 「あっ……そうなんだね」 轟くんが小室くんの首根っこを掴んで僕から引き離す。そして二列並びだから七班の一番前に二人は陣取った。小室くんは轟くんに何か怒られているようでげんなりしているみたいだ。 松村くんも起こる全てが楽しいかのような表情で二人の後ろに並んだ。 「亜樹、いつ仲良くなったの?」 「えっ……と、ちょこっと話したりしたら、気に入ってくれた、みたい……」 「ふ〜ん」 思った通り颯太は妙に整った笑顔で僕を覗き込む。苦笑いしながらぎこちなく視線をずらすことしかできない。 でも僕だってまさかこうなるとは思っていなかった。ただ仲良くなりたいと思っただけ。 気に入ってもらえたのは嬉しい。だけど颯太を傷つけるのは、嫌だ。 そう考えたら勝手に手が動いて颯太のブレザーをちょこんと掴んでいた。 「いつも一番は颯太だから……」 最大限の誠意を込めて颯太を見上げる。颯太は僕の瞳を真っ直ぐ見つめ返し。 ふっと笑った。 「大丈夫だよ。亜樹に仲良い人ができるの嬉しいから。よかったね」 「で、でも……」 「うん。嫉妬しないわけじゃないよ。でも友人が増えるのは素直に喜ぶべき」 「颯太……」 ぽんぽんって頭を撫でてもらえて、思わず背中に手が伸びそうになる。慌ててそれを引っ込めると、松村くんの後ろに二人で並んだ。 各クラスの学級委員や先生たち、もしくはメガホンの効力によって、校庭には規則正しい列ができ始める。 清水くんも仕事を終えて七班の列に入った。 それからは校長先生や学年主任の先生が旅行前の挨拶をしたり、改めて注意事項を述べたりした。そして空港に向かうためのバスにそれぞれ乗り込む。 ここも班ごとだから、轟くんと小室くん、その後ろに松村くんと清水くん、その後ろに僕と颯太という並びになっている。 颯太はいつも僕を窓側にしてくれるから、例に漏れず今回も窓側。 「颯太は景色見づらくていいの?」 「え?」 「いつも窓側にしてくれるでしょ?」 「あー……んー、亜樹が目をキラキラさせて景色を見ているところを見るのが好きだし、奥の席なら誰かに手を出されないし、かな」 恥ずかしげもなくさらっと言ってのける颯太。逆に僕が赤くなってしまう。 でも確かにいつも颯太と窓に挟まれて安心できている気がする。これが通路側だったら人が通るたびに落ち着かなかっただろう。 バスや新幹線、飛行機は席同士の距離が狭いから余計に。

ともだちにシェアしよう!