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雨塊を破らず1
空の旅は順調に進み、今度は着陸の番になった。離陸の時と同じく、緊張した。もちろんちゃんと着陸したのだけど。
そのあとはまた先生の指示に従って空港を出た。
「ん〜やっと地面」
「飛行機って体固まるよね」
「そうだね」
颯太が抜けるような青空のもと気持ちよさそうに伸びをする。僕も真似してみると確かに気持ちよかった。暖かいから余計に。
時刻はお昼時。今日は時間的に見学場所は二ヶ所のみ。
まずバスに乗り、向かうのは平和を象徴する公園。
行きと同じ座席で揺られ、そこまで時間がかからずに到着した。
ここは全員が一気に行くため各自自由行動だ。そういうわけで僕は颯太と一緒に公園内へ踏み出す。
まず始めにお昼ご飯を売店で買って食べた。それから散策に繰り出す。
公園内は緑が多く、落ち着いた雰囲気だった。そこをのんびり歩いて、平和を祈念する建造物などを見て回った。
どれもが心に突き刺さるようだった。
そのまま進み続けてやがて白い塔にたどり着く。
近くで見ると結構大きく見えた。青空を背景に、白くそびえ立っている。
颯太が配られたパンフレットを開く。
「……平和を祈念するための堂、だって」
「平和を……か。なんかさ……」
「うん。綺麗だね」
皮肉なことに青と白のコントラストはとても美しい光景だった。まるで一枚の絵。
堂から青空にふっと視線を移す。
澄んだそれは僕にとっては当たり前のものだ。いつも、いつでも目の前にあって、なくすことなどない。
これが平和、なのだろう。
若い世代にとって戦争は歴史の教科書の一部。
でも現実には戦争があって。青空を見上げる時間さえ、ない時代があって。
平凡な時間を当たり前に思えることがすごく幸せなこと。
本来なら、颯太との時間も、当たり前のものではないのかもしれない。
そう思うと物凄く淋しくなった。
「颯太……手、繋いでもいい?」
「いいよ」
不安げな顔で颯太を見上げると、颯太は微笑んでくれる。
僕らは体で隠すようにして、堂を見る間だけ手を繋ぎ続けた。
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