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ホテルにて1
資料館を見学したあとまたバスに乗り込んだ。今日訪れる場所はこれで終わり。残すはホテルに向かうのみだ。
もうすっかり慣れてしまったバスの揺れを感じつつ無事にホテルに到着した。
赤茶色の外壁で、少し良さげなホテルといった感じだ。
もちろん僕の学校の全員がここに泊まるからロビーはそれぞれの部屋の鍵を受け取る生徒の列で混雑していた。
受け付けの人も五人で一気に対応してくれている。
「亜樹、荷物俺が先に取ってくるよ」
「えっ、でも……」
「大丈夫、亜樹のならわかるから。ロビーで待ってて」
「わかった」
颯太が爽やかな笑みと共に、事前に送られていた生徒の荷物が置かれた部屋に向かう。
僕は大人しく列に並んだ。
五人もやってくれているおかげかスムーズに列は進んでいってすぐ僕の番になる。部屋番号を言って重たい鍵を受け取った。
そのあとロビーの端で颯太を待つ。
ざわざわと煩いロビーは少し心細い。幾人もの生徒がロビーを行ったり来たりし、しょっちゅう談笑しながら横を通り過ぎていく。
止まっている僕に不思議そうに目を向けてくる人もいて、悪気はないとわかっているけど居心地は悪い。
やっぱり荷物のところに行ってしまおう。道は一つだから入れ違いはない。
「あっ……」
そう思って周りを見ずに歩き出したら誰かにぶつかってしまう。
「いったー……」
「あっ……ごめんなさい」
その拍子に相手の子が尻餅をついてしまった。そんな勢いよくぶつかったつもりはなかったけれど、尻餅したのは事実だ。
初対面だから僕の臆病が手を差し出していいのか迷わせたけど、とりあえず差し出してみる。多分何もしないよりはマシだと思う。
すると相手の子は僕の手を無視して立ち上がり、強気な目線を僕に向けた。
僕はそれに体を強張らせてしまう。
立ち上がった姿はともすると僕より小柄だ。これなら尻餅してしまうのも頷ける。
「気をつけてよね」
彼は最後に一睨みすると、見るからに怒った様子でその場を立ち去った。
下田さんばりの強気な性格と、杏ちゃんのような可憐さを、併せ持った感じの子だった。女の人にたとえると更に怒られてしまいそうだけど。
すっかり気分の沈んだ僕は結局元の場所で颯太を待った。
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