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ホテルにて3

熱っぽい視線が絡む。一回では足りない。もっと、したい。そうすれば止まらなくなるという危機感もどこかにはあるけど、押しのけてしまう。 「颯太……」 「いいよ、亜樹」 僕は颯太の首に手を伸ばす。颯太は優しく微笑んで、僕の唇を食んだ。そうやって焦らしてくるもんだから僕は颯太を睨む。 そして自分から唇を触れさせようとした瞬間、 ドンドンドンッてドアを叩く音。 「……っ!?」 「はーい」 僕は目を見開いて固まるのに、颯太はすぐに返事をする。こういう時の対応が本当に素早い。 「二人とも夕飯遅れんなよー!」 「わかった、ありがとう!」 音の正体は清水くんだった。わざわざ伝えにきてくれたらしい。流石クラスのリーダー的存在。こんなことは当然なのだろう。 「清水くんってほんと……」 「ん? なに、颯太」 「いや……こういう時に来るなぁって」 「どういうこと?」 「ううん。ご飯行こうか」 「……わかった」 颯太の言わんとするところはよくわからなかったけど、とりあえず立ち上がる。少しだけ乱れた服と布団を綺麗にして部屋から出る。 やはり修学旅行でこういうことをするとバチが当たるんだ。 僕は心の中で旅行中は禁止と誓う。 食事は全員が入るくらい大きなホールのような場所でとるらしい。 颯太と一階に降りてホールへ繋がる扉を開けば、一気に大きなざわめきに包まれた。かなり大きな空間だ。端から端に視線をやれば目がくらみそう。 ホール内には料理が上にある丸テーブルがいくつも置かれ、めいめい好きな席に座っている。 「渡来くん、間宮くん」 どこに座ればときょろきょろしていれば轟くんと小室くんが手招きする。ちょうど二人分空いていたのでありがたく座らせてもらう。 この丸テーブルには二人以外によく話す人はいなかった。 「清水くんと松村くんはいないんだね」 「あの二人はあっち」 小室くんの指差す方を見る。一つの丸テーブルにサッカー部の人がたくさん座っていた。 清水くんは僕から横顔が見える位置に座っている。 僕がそうやって清水くんを見つけた瞬間、たまたま清水くんがこちらを見た。 少し驚いた顔をしたあと、申し訳なさそうに微笑み、片手を上げてくれる。僕も笑顔で小さく手を振った。 別に気に病む必要はない。

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