403 / 961

ホテルにて4

○ ● ○ 「間宮、あれいいのか……?」 清水くんと手を振り交わす亜樹を見て轟くんが声を潜めて俺に聞く。 「ああ、まあ……清水くんとは色々あったからね。いい友人なんだよ」 亜樹は天然が入っているからこういったことはよくある。仲良くなった人には無自覚にこうしてしまうみたいだ。 確かに嫉妬しないかといえば嘘になるのかもしれないが、止めるつもりもない。亜樹の行動を制限する権利は恋人でもないし、そもそもこの行動が俺への想いを消すわけでもない。 せっかくできた友人なのだから仲良くすればいいと思う。それに清水くんは俺にとってもいい友人だ。世話になった人。 無自覚ゆえ片想いの清水くんに辛い思いをさせている時もあるし、これくらいの甘さは罪滅ぼしであるかもしれない。 「あー毎日一緒にお昼食べたりしてるよね」 「うん。俺の次に心を許してるんじゃないかな」 「……心広いんだか狭いんだかわかんないな」 正直に告げれば轟くんは苦笑した。 俺がわざと言ったと思われたようだが、俺にとっては当たり前のことだ。俺だって亜樹に一番気を許している。 亜樹は少し手を振ったあと机に向き直った。 「渡来く〜ん……」 「ひっ! や、やめ……」 すると小室くんが亜樹の腰をやわやわ揉む。亜樹は少し瞳を潤ませて慌てて俺の方へ避難してきた。 こうやってすぐに俺に助けを求めるところとか、本当に可愛い。 対処がわからないようなので俺が代わりに小室くんの手を外す。 これは俺への見せつけなのか、単なる性格なのか。 「清水くんってどういう存在〜?」 「……へ?」 そして間延びした声で亜樹に問いかける。 小室くんはその時気になったことをその時に限って聞くタイプみたいだ。腰を触ったのはついでなのだろう。 亜樹は少し考えてから。 「うーん、清水くんは優しくて、前に助けてもらったりもしたんだ。大事な友人だよ」 「それだけ?」 「それだけ……って?」 素直な思いを告げた亜樹の顔を小室くんは覗き込む。かなりの至近距離に亜樹がたじろいだ。 そのまま時間が過ぎ、それから小室くんは溜め息を吐く。 「可哀想だねぇ……」 「……え?」 そのあと小室くんが言った言葉に亜樹は不思議そうな顔をする。そのあと固まる。 また深い思考に入ってしまったらしい。 おそらくなぜ可哀想なのか、褒め言葉がいけないのか、それはなぜか等々あらぬことを考えて困惑している。 そんな時には俺が助け舟を出す。 「亜樹……小室くんの言葉を真に受けなくていいよ。ほらご飯食べよう」 「なんかごめんな、凛が……」 「いひゃい〜」 亜樹の肩を優しく叩いて目の前のご飯に顔を向けさせる。 轟くんは謝罪して小室くんの頬を軽くつねった。 亜樹はまだよくわかっていないようだったけど大人しく箸を食事に向けた。 俺も続いて食べたが、沖縄料理も混じるその料理たちはどれも美味しかった。

ともだちにシェアしよう!