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ひと騒動のマリンブルー3

朝食を終えて部屋に戻ると、全ての荷物を持ってホテルを出た。 バスに大きな荷物を積んで、旅館に運んでもらうことになっている。 今日は班別行動だ。僕の班は海に行き、そのあと昼食、それから水族館に行く予定。 まず公共交通機関を駆使して海まで行った。 青い空にスカイブルーの海。視界いっぱいに広がった。 「海がオレを……呼んでいる!」 砂浜に近づくにつれ強くなる穏やかな波音や潮風の香り。 松村くんが叫んで駆け出した。裾や袖をまくり、靴下とローファーを放り出して、バシャッと水に入っていった。 そんな松村くんの背を見ながら、瞳に海の輝きを反射させる。 颯太との旅行でも海は来たけど、沖縄の海はやはり違う。水色が強い青で全体的に透き通っている。 冬でもその美しさは変わらないみたいだ。昼間なら二月でも暖かいから、海を見ていると気持ちいい。 松村くん以外の五人はゆっくり砂浜に降りて、一人ではしゃぐ彼の様子を眺める。 水に足をつけるのは楽しそうだ。 「お前らも来いよ!!」 するとタイミングよく松村くんが叫ぶ。でもみんな苦笑して、誰も動こうとしない。 少し子供っぽいだろうか……。 颯太を見上げる。ばっちり視線は合ってしまって、愛しそうに微笑まれた。 「亜樹も行ってくれば?」 「……颯太は、来ないの?」 「俺は見ててあげる」 「……じゃあ僕もいい」 楽しそうだけど、颯太が一緒じゃないなら嫌だ。近くにいないのは、淋しい。 「おーい!! みんな〜!! 蓮! 間宮! 渡来! 小室! 轟!」 でも松村くんは依然として叫ぶ。隣にいる清水くんがふっと笑いを漏らした。 「仕方ねーな! ほら行くぞ!」 清水くんがバシッと僕の背中を叩いて走り出す。颯太も楽しそうに笑って僕の腕を引いた。 小室くんも「暑くなってきたしー」なんて言いながらのんびり歩きだし、轟くんがその背を押して無理やり走らせる。 僕もパッと顔に花を咲かせて颯太と走りだした。 「やっと来たか! 遅いぞ!」 砂浜には一列に六足のローファーが並ぶ。 恐る恐る澄んだ水に足をつけると涼やかで、少し冷たいくらいの温度が僕を包んだ。足の裏には柔らかい砂の感触。 足の指をうにうに動かしてみると面白かった。 「亜樹」 海の入り口でそうやって楽しんでいると不意に名前を呼ばれる。顔を上げるともう既に他の五人はもう少し奥にいた。 僕も颯太のもとへ向かう。

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