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ひと騒動のマリンブルー6
「……え、えっと」
そしてそんなことを言うものだから、僕の頬はポッと赤くなる。当然好きに決まっているけれど、流石に友人の面前で言い放つことは恥ずかしい。
「お願い。答えて」
「……清水くん……?」
でも清水くんは珍しく食い下がる。
その顔には恐怖とも、淋しさともつかぬ、ただ暗いことは確かな感情が浮かぶ。
どうしてだか僕にはわからない。でも清水くんにとって言葉という形が、大事なのかもしれない。なぜかそう思った。
「……颯太のことは、大好きだよ。世界で一番、大切な人」
「……サンキュ」
切実な様子だったから素直に言う。やはり恥ずかしくてはにかんでしまった。
清水くんは小さくお礼をしてまた前を向いた。
僕と清水くんの間には波音が流れる。
少し気まずいかも、しれない。
もちろん友人の前で恋人への想いを言ったというのもあるし、清水くんがなぜそんなに悲しそうなのかもわからないし。
僕もトイレに行ってしまおうか。そういえば颯太と松村くんはやけに遅い。
「茂も間宮も遅いな。海の家でも見に行ったのかな……。俺少し見てくるわ」
「……あ、うん! 行ってらっしゃい」
それは清水くんも同じだったようで、足早に隣を去っていってしまう。
悪いことしてしまったかな。いや、清水くんも同じことを思っていそうだ。
ぽつんと残された僕はとりあえず海を見る。
「渡来くーん」
すると突然小室くんの声がする。先ほど彼が向かった方向を見ると、岩のあたりで手招きをしている。
何か面白いものでも見つけたのかもしれない。そこまで離れた位置でもないからと僕はそちらへ向かう。
「どうしたの?」
「ここさぁ〜……」
「ん?」
小室くんが岩陰の方を指差す。僕は小室くんと轟くんを過ぎて、指差されたところに行く。
「小室くん、何もないけど……」
しかしそこにはめぼしいものは何もない。ただの湿った岩々があるだけ。生き物の影も形もなかった。
僕は振り返って首を傾げる。
「うん〜。だって何もないから」
「……え?」
危機感を覚えた瞬間にはもう遅かった。
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