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ひと騒動のマリンブルー7

トンッと肩を押されて背中が岩につく。 岩と小室くんと轟くんに囲まれて、僕は逃げ場を失う。二人の顔はのっぺりと無表情で背筋が凍る。 「小室くん、あの……」 「渡来くんてさ、胸感じる?」 「……え? な、なに言って……ひっ」 いつもと変わらない声のトーン。そのはずなのに恐怖はじわじわ首を締める。 それでもまだ抜け出せるかもしれない。そう思って平静を装おうとしたが、ワイシャツの上から乳首を摘まれて声を漏らす。 「や、やだっ……」 「気持ちいいんだ、やっぱり」 少し乱暴だけどその手を振り払おうとしたら、轟くんが僕の両手を押さえつける。 僕の力じゃ轟くんに勝てないし、そもそも二対一だ。 「やっ、轟くんっ……あっ」 「頼む、渡来」 「なにそれ……ひぅっ、ん」 切実な声でお願いされても困る。だってこんなの抵抗するに決まっている。颯太の手以外で感じるなんて、嫌だ。 それでも小室くんの指が止まらないのも事実だ。身をよじってもついてくる。腕を動かしても止まらない。ぴりぴり、ぴりぴり、快感が流れて、感じてしまう。 ぐっと唇を噛んで耐える。 「んっ……んん」 顔をそらして目も閉じて。だから二人がどんな顔をしているかわからない。 いや、わかりたくないかも、しれない。 仲良くなりたいや話したいって言葉は、最初からこれが目的だった。友人だと思っていたのは僕だけだった。そんな可能性が浮かんでくるから、嫌で嫌で仕方ない。 せっかくできた友人だと思ったのに。違うのだろうか。僕の勘違い、だったのか。 強く閉じた瞳からポロリと涙が零れる。 「何やってるの」 そんな僕を救うのは、やはり、颯太だ。 「颯太っ……!」 目をこじ開けると二人の背後に颯太の姿が見える。驚いて固まった二人の間を抜けて僕はそこまで駆けた。 そしてその体にぎゅうっと抱きつく。 怖かった。悲しかった。 ボロボロ涙が零れていく。 颯太は僕の背に手を回してくれた。いつもよりきつい抱きしめ方で守られている感じがした。安心が恐怖を溶かして、思い出したように体が震えだす。 「俺の亜樹に、なにした?」 「間宮、その……」 「答えろよ」 颯太の声が低い。たった今まで怖い思いをしていて、そこに更に大好きな人の怖い声。 無意識に震えが大きくなる。 「……とりあえずこっち来て」 すると一回深呼吸をした颯太。次に出てきた声はいつも通りの柔らかさだった。

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