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第26話 4-4

「タイガ、おはよう。」 「おはよう、ミモザ。」 会社の廊下でミモザと合流した。部署がある部屋までを一緒に歩く。 「この間のお店、すごく楽しかった。また行きたいな。」 「そうか。」 「ねぇ。あの店員さん、ほら、なんて名前だっけ?存在が強烈過ぎて名前が頭に入っていなくて。」 「ああ、カツラ?」 ミモザは目を丸くしてタイガを見た。 「へぇ、呼び捨てするぐらい仲いいんだ?この間は素っ気無い感じだったけど。」 さすがミモザはするどい。笑ってごまかすしかない。 「ははは。」 「なんか私のことすごく遠まわしに口説いてなかった?」 「そうか?よくわからなかったけど。」 「すごく綺麗な人だったじゃない。かっこよくて完璧で。素敵だったけど、私、ああいうタイプは苦手なのよね。」 「え。」 ミモザのこの言葉は意外だった。カツラを拒む女性がいるとは。カツラの計画は彼の努力もむなしく無駄に終わってしまったようだ。 もともとミモザがタイガに気があるというカツラの見立て自体だって間違っているかもしれないのだが。 「私、あのお店気に入ったんだけどあの人にまた口説かれるのもね。悪い気はしないわよ。すごく素敵な人だし。でもああいう人って絶対女遊び激しそう。黙っててもよってくるじゃない。」 カツラに対して前半はともかく後半は彼女の言う通りである。 「もうなんか経験豊富な雰囲気が出てるもの。あんな色気のある男初めて会ったわ。」 ミモザは話し出したら止まらない。しかも今彼女は自分の大切な恋人のことを彼の見た目だけで勝手に推測して話している。事情を知らないのだから仕方のないことだが、タイガは気分が悪くなってきた。 「ごめん、俺あっちに用があるから。」 「えっ、そうなの?じゃ、また後で。」 何とかミモザから逃げ出すことに成功した。  その日、タイガはまた『desvío』を訪れた。ミモザにあんなことを言われたせいか、カツラに早く会いたくて居ても立っても居られなくなったのだ。カツラが本気でその気になったら落ちない相手はいないだろう。現に自分はカツラに夢中だ。なにも知らないミモザにカツラの人間性を決めつけられてタイガは腹が立っていた。  週末のせいか店は混んでおり、タイガはいつもの席に腰を掛けカツラが自分のところに顔を出すのを待っていた。 「いっらっしゃい。どうした?」 ようやく奥が落ち着いたのか、カツラはタイガの食事が一通り終わった頃に顔を見せに来た。 「うん。」 周りの様子を伺う。今なら誰もいない。カツラに計画が失敗したことを伝えるなら今だ。 「カツラ。」 ちょっとっとこちらに近づくように周りにばれないように手招きする。不思議に思いながらもカツラがカウンター越しに体を近づけてきた。 「いらっしゃいませ。」 客が入ってきたようだ。他の店員が声をかける。そんなことは気にせずカツラに早く伝えようと思ったら今来た客は彼女だった。 「タイガ!やっぱりここに来てたのね。」 そう言って跳ねるようにタイガの隣の席に腰を下ろす。カツラはタイガより早くにミモザに気付きさっと身を引いていた。 「いらっしゃい。」 優しい客向け用の笑顔だ。 「タイガはなに飲んでいるの?」 「彼は今日は焼酎を飲んでいる。それは極楽かな?」 カツラがタイガの代わりにミモザの質問に答えた。 「そうだ。確かそんな名前だったと思う。」 「上品な味わいでまろやかですっきりした芋焼酎だ。君も同じものにする?」 「そうね、タイガと同じもので。ねぇ、ところでタイガ...。」 ミモザは今日はカツラに辛辣な態度だ。カツラは酒の用意をしに奥へと消えていった。タイガはミモザの話など頭に入らずカツラが戻ってくるのを待っていた。 「お待たせしました。」 ミモザの酒を持ってきたのはカツラではなくウィローだった。タイガがとまどっているとミモザに腕をさすられた。 「ほら、タイガ。乾杯しよ?」  カツラの自宅で彼の帰りを待つ。確かにカツラの読みは当たっていたかもしれない。カツラに指摘されたからか、意識してみると今夜はミモザによく触れてこられたのだ。 「うーん。」 こんなことは今まで経験がなかった。一人カツラの自宅で湯につかりながら考えていると知らぬ間にかなり時間が経っていたようだ。浴室のドアが開き、カツラがひょこっと顔をのぞかせた。 「まだ入ってるのか?」 「カツラ、おかえり。」 「俺も一緒に入るか。」 そう言ってドアが閉まり、しばらくすると全裸のカツラが浴室に入ってきた。本当に何度見てもほれぼれする体だ。カツラが全身を洗っていく様子をタイガはぼーっとしたままみとれる。カツラは立ち上がり湯に浸かる前にもう一度シャワーを浴びている。形の良い尻に視線が釘付けになる。 「こら、さっきからなにをじーっと見てんだ?」 「えっ。」 カツラに言われてようやく尻から目を離しカツラの目を見る。腰に手を当て仁王立ちをしている姿もたまらなく、タイガはカツラの全てを今すぐ味わいたくなった。 「タイガはスケベなやつだな。」 タイガが欲情した目で始終見いていたことをカツラは気づいていた。それなのに気づかぬ振りをして裸体を晒し続けた事実にタイガはたまらなく興奮した。 カツラがゆっくりとたまった湯に体をつける。彼の隙間に湯が遠慮することなく侵入していく。尻の割れ目に湯が侵入する時には息をとめて食い入るようにそこを見てしまった。タイガはカツラが浴室に入ってきた時から目でカツラを犯していた。  カツラは自分の向かいに座ると思ったら、タイガにもたれ背中を預けてきたので、湯の中でいきり立ったものがカツラの腰にあたってしまった。 「カツラ。」 たまらず背後からカツラに腕を回し抱きしめる。 「タイガ、計画失敗した?」 カツラがポツリと尋ねてきた。

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