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第27話 4-5 (R18)
「え?カツラ、気付いたのか?」
「まぁなんとなく。」
カツラは視線を上にあげフーとため息をついた。
「ホリーやツバキ系の女性か。俺には天敵だ。」
ホリーという女性のことはタイガにはわからなかったが、ツバキはカツラに惹かれていた。カツラが「天敵」と例えたホリーという女性が一体どのような人なのかタイガは少し興味をそそられた。
「お前もいい加減自覚した?」
振り返りながらカツラが問う。美しい翠の瞳に見つめられ彼に回した腕に力がこもる。
「うん。カツラに言われたから注意していたらなんとなくそうなのかなって。俺こういうこと初めてだからどうしたらいいのかわからなくて。」
「おそらく今までもあったと思うけど。お前鈍感だから。相手が積極的じゃなかったんだろ。」
「それはないと思うなぁ。」
カツラが体ごとこちらに向いた。彼の白い肌が艶めいている。
「お前さ、結構いい男だぞ。俺が一目惚れするぐらいなんだから。」
「いや、そんな。」
面と向かっていわれるとかなり恥ずかしい。自然とニヤけてしまう。
「女はさ...。」
カツラは言いながらタイガの胸のあたりを指一本で上から下へゆっくりと下ろしていく。性欲を挑発するような触り方だ。
「こういう体格のいい男が好きなのが多い。タイガは雰囲気が優しいし。」
そう言ってそのまま舌を絡めキスをしてきた。下に移動した手はタイガのいきり立ったものを強く握りしめ上下にしごき始めた。
「うっ。」
カツラの中に入りたいのにと思った瞬間、カツラが軽く腰を上げ自らの中に招き入れた。
「ああ...っ。」
「ん...。」
お互い激しく腰を振り湯が溢れでる。
数分後ぴたっとニ人の動きがとまり、浴室に快楽を得た声と激しい息遣いがこだまする。そして激しく揺れていた水面がゆっくり動きを止め始めた。
「はっきり好きと言われたわけじゃないし、もう一度恋人がいるってわざわざ言うのも変だし。」
風呂からあがり、リビングでくつろぎながら今後のミモザ対策を話し合う。
「参ったな。」
カツラは気楽に酒を飲んでいる。タイガからはカツラが本当に参ったとは思っていなさそうに見える。
「泥沼になるって言ってたろ?」
「うーん。」
カツラはあくびをしながら答える。カツラは先ほどまで仕事をしてきたのだ。タイガは彼を早く休ませなければと思い一緒にベッドに向かった。「この件はまた明日考えればいい。」タイガは愛しい恋人をもう一度抱きたい気持ちはあったが、その日は隣りで大人しく眠りについた。
「おはよう、タイガ。」
「おはよう。」
週明け、ミモザとまた時間が重なった。同じ職場、部署も近いのだから避けられないことであった。
「ねぇ、タイガは週末ってなにしてるの?」
これはもう一度恋人がいると言えるチャンスなのではと思い、ミモザに事実を伝えるべく話した。
「恋人と一緒にいる。」
「ほんとに?どんな感じの人なの?」
「美人だよ、すごく。」
「自分でいうの?」
「いや、ほんと。」
「ふーん。年下?」
やけに質問してくる。情報を集めているのかもしれない。具体的に答えて本当のことだとわかってもらおうとタイガは答え続けた。
「年上。しっかり者で優しくて。俺、夢中なんだ。」
「そう。じゃ、今度のパーティに連れてこれば?」
「え?」
ミモザが言っているのは年に一回ある会社の懇親パーティのことだ。その時は家族、恋人などパートナーがいる者は一緒に参加するしきたりになっていた。去年はカエデと一緒に参加したのだ。
「ね。そんなに素敵な人なら私も会ってみたいし。」
ミモザの笑顔はいじわるだった。彼女の表情、言い方は嘘だと思っているように感じる。別に隠す必要はない。タイガとしては気になるのは付き合っていることを他の者に知られてカツラがどうな思うのかということだけだった。
今夜もカツラの家で夜を過ごす。タイガはつき合ってから毎日のように彼の自宅で寝泊りしている。最近ではもう一緒に暮らしてもいいのではと考えていた。
まずはこの件を片付けてからとカツラに懇親パーティーの話を持ちかけた。
「〇月〇日に会社の懇親パーティーがあるんだ。カツラ、一緒に出席できそう?」
「〇月〇日?待って。その日は...。」
予定表に目を落とす。
「だめだ。店に出られる人数が少ないから休めない。急にどうした?」
「週末だし俺も一人で出席しようと思ってたんだけど。ミモザが恋人を連れて来いって。」
「なるほど。気にせず一人で出れば?」
カツラは早くもこの件が面倒になってきたのか少々投げやりな態度だ。
「え、でも。」
「彼女がどうしようと俺たちがしっかりしていたら問題ないだろ?」
それはカツラの言う通りである。以前タイガは嫉妬でカツラにつらく当たった。今度は立場が逆転しているわけだが、自分にはその心配はないということか。
「タイガ。お前、女無理なんだろ?」
カツラがタイガの膝の上に向かい合うように座ってきた。
「それはそうだけど。」
「放っておけばいい。」
そのままタイガにキスをし、ニ人は今夜も愛し合った。
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