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第32話 4-10

月曜日、ミモザのことは気にかかるが仕方のないことと割り切りタイガはいつも通りの時間に出勤した。先日よりも気分はましでやはりカツラがはっきり言ってくれたおかげなのだとありがたく思った。 「おはよう、タイガ。」 やはりミモザとはちあった。 「おはよう。」 ミモザは至って普段通りだ。ならばこちらもそれに合わせようとタイガもキスの件には触れずにいた。 「ミモザっ!おはよう。」 ニ人で無言で歩いていると今日は女子社員が声をかけてきた。彼女はミモザと同じ部署の社員らしい。 「おはよう。」 「ミモザ、すごい噂よ!いつ仕留めたのよ?」 「また?まだそういう仲じゃないって言ったでしょ。」 「だってキスしてたんでしょ?今度紹介してよ。」 ニ人の会話を聞き、タイガは危機感を覚えた。カツラとミモザの裏庭でのやり取りを見ていた者がいたのだ。 「私よりタイガの方が親しいから。タイガに紹介してもらったの。」 「え?」 急に話を振られたタイガは話が見えない。ミモザはどういうつもりなのか? 「えー、そうなんだ。じゃ、今度みんなで会おうよ?ね?」 ミモザの同僚は厚かましくこう言ってきた。 「ねぇ、まだつきあってもいないのよ。無理にきまっているでしょ。」 「だって、私懇親パーティー欠席しちゃったから見れなかったんだもん。すごい素敵な人だったってみんなが言ってるでしょ。そこらへんのモデルよりかっこよかったって。」 ミモザと同僚の会話の対象の人物像は明らかにカツラのことだ。彼女たちの会話についていけずタイガは頭痛がした。第一ミモザはカツラは嫌だと言っていたはずだ。 「ちゃんとお付き合いしたら紹介するから。あっ、じゃ、タイガ、またね。」 ミモザはそのままその女子社員と会話に花を咲かせながら自分の部署へと去って行った。「お付き合い?一体どういうことだ?」昼休み、どうしてもミモザの言ったことが気になり彼女を捕まえてこの件についての話をした。 「どういうつもり?」 「なにが?」 「俺とカツラのことは知ってるんだろ?なのにどうしてああいう話になるんだ?」 ミモザは熱くなっているタイガをよそにはぁとため息をついた。 「恋愛って自由でしょ?私が誰に好意を持とうが勝手じゃない。」 「好意って。カツラのことを言っているのか?」 ミモザがタイガをじっと見つめる。 「なんだよ?」 「やっぱり。私の方が彼には合ってる。」 「は?」 ミモザの勝手な言い分に腹が立ったタイガは今までたまっていたものを吐き出すように彼女に言葉を浴びせた。 「カツラはあり得ないって最初言ってたよな?なんでそうなるんだ。ずっと自分勝手なこと言っている自覚ないのかよ!」 「タイガってほんとガキね。彼に愛想つかされるのも時間の問題よ?ただ単純に彼に興味が出たの。それにやっぱり綺麗な人は好きよ。キスもよかったし。」 「本当にカツラのことが好きなのか?周りの反応を楽しんでないか?」 タイガはミモザの言いように呆れて口がきけなかった。信じられないという目で彼女を見る。 「さぁね。」 タイガにはミモザの本心はわからなかった。 「ミモザなんだけど。カツラに気があるかもしれない。」 今日は月曜日なのでカツラは休みだ。退社後すぐにカツラの自宅へ向かい、今日のミモザとのやり取りをカツラに報告した。 「はあ?なんだよそれ。」 カツラは床に座ってソファにもたれリビングのテーブルにノートを広げなにか書き込んでいた。新しいメニューのレシピのようだ。様々な色を使い綺麗に絵付きで書き取られたレシピノートは見ごたえがありそうだった。カツラはタイガの話を聞き一旦手を休める。 「裏庭でのやり取りを見てた者がいたらしくてすごい噂になってる。」 「ふーん。」 カツラの反応にタイガは少し苛つき、きっと睨みつけた。 「放っておけば?」 手にした鉛筆をくるくると指で回す。そんな姿でさえ彼は決まるのだ。キスなどされたら相手が恋に落ちてしまうのも仕方のない結果のような気もする。 「タイガ。」 むくれているタイガに気付き、カツラが振り返りソファに腰を下ろしているタイガの膝の上に腕を置いた。 「今からエッチなことしよっか?」 この状況でこんなふうに誘われるなんて思っていなかったタイガはすぐに反応をした。カツラがそれに気付かないはずがなかった。 「ほら、こいつもしたいって。」 手のひらを固くなったものの上に置かれ、それは余計に重力に逆らって立ち上がろうとする。 「ベッドに行こう?」 タイガもカツラを誘った。タイガもとにかく今はカツラを抱きたかった。カツラがにっこり笑い立ち上がり手を差し出してきたので、タイガは彼と手を繋ぎ寝室へと向かった。

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