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第44話 7-2
「カツラ、大丈夫か?顔が湯につかるぞ。」
「ああ、すまない。眠すぎて。」
カツラは自宅に帰りタイガと一緒に風呂に入っていた。湯につかると心地よくてすぐにまどろんでしまう。そんなカツラを気遣って、タイガはカツラを湯に入れたままで上をむかせ彼の髪を洗っていく。これも気持ちよすぎてカツラは気付けばベッドに横になっていた。タイガはカツラの足をマッサージしている。
「タイガ?」
「大丈夫か?そのまま眠っていいぞ。」
タイガの思いやりがとてもうれしい。カツラは抱きしめてくれというふうに両手は伸ばした。
「カツラ、どうした?」
そう言ってタイガがカツラを抱きしめる。カツラはタイガにキスをし、彼が着せてくれたガウンを脱いだ。両足でタイガのズボンを器用に脱がし自分の中に入るようタイガを誘導する。
「カツラ、疲れているのに。」
嬉しさを隠しきれていない感じでタイガが言う。
「疲れているから余計にじゃない?」
お互いがそうしたいのだから我慢する必要はない。タイガとカツラは繋がり激しく愛し合った。
「タイガ、出張にしようと考えているんだけど。予想を超えてかなりひどい状態だから。」
「そうか...。こんなに疲れているんだもんな。俺、毎日電話するし。カツラのこと信じているから。いいよ、出張で。」
タイガは内心トベラのことが気になった。しかし無理をさせてカツラが体調を崩したり、疲れた状態で車の運転をして帰りに事故に巻き込まれることも避けたかった。そのため渋々賛成したのだった。
翌日からは泊まりとなった。カツラは宿泊用のホテルに荷物を置き、トベラの店へと向かった。
店中の至る所に並べられている酒を副店長と相談しながら、同じような性質同士のグループに分けて並べなおす。その方が酒も覚えやすく見つけることも容易だろう。トベラの方針の基本的な部分は押さえつつ、あとは現場にやり方を任せてくれるようにカツラはトベラに直談判し、彼の了解も取っていた。
バイトたちには担当エリアや当日のやるべきことが理解しやすいように毎日の行動計画表を作成した。
カツラの一日は基本的には店とホテルの往復だけで、トベラとの関わりはほとんどなかった。副店長はなかなか人がよく、少し頼りないところはあるがバイト達からも信頼されていた。カツラが言ったことも素直に引くうけてくれ、仕事がやりやすかった。「バイトも成長しているし、新店長がよっぽどのやつでない限り、大丈夫だろう。」そんなふうに思えるまでにみんな成長していた。
「カツラ、明日は休みだろ?」
トベラがカツラに明日の予定を確認する。
「ええ。平日ですし、多分このメンバーなら俺がいなくても回せると思います。」
「じゃ、ちょっとつき合ってくれないか?お前のおかげでこの店はかなり良くなった。礼がしたい。」
「いえ、ちゃんと研修代いただいているので。」
「遠慮するな。明日13時にホテルまで迎えに行く。」
トベラは一方的にそう言って去ってしまった。
翌日。トベラとの約束の時間になった。動きやすい服装でと言われたが、いったいどこに連れていかれるのだろうか。
「カツラ、乗れ。」
いかにも高そうな立派な車で迎えられ、着いたところはジムのようなところだった。トベラはどうやらここでたくましい肉体を鍛えているようだ。
「カツラ、お前に護身術を教えてやる。」
「護身術?」
「身につけておいた方がいいぞ。とくにお前みたいなタイプはな。」
「それはいったいどういう意味だ。」と苛立ったが、ただで教えてくれるというのだ。この際カツラはトベラから手ほどきを受けることにした。
なるほどトベラは身のこなしが上手いと思っていたら、かなりの達人らしい。聞けば格闘系は幼いころからやっていたとこの時知った。
今日一日でものにするのはさすがに無理なので、もしもの時の身のこなし方を何種類かトベラ本人から手ほどきを受ける。その間、彼の態度は紳士的で、やましいことは一切してこず、カツラも技をある程度ものにしたときには気持ちのよい汗をかいていた。
「なかなかいい線している。お前普段から体は鍛えているのか?」
「それはね。たまに走ったり、へりで懸垂なんかはしています。」
「大事なことだ。汗かいたな。風呂にでも行くか。ここの風呂は温泉をひっぱってきているんだ。施設も新しいからおすすめだ。」
「トベラと風呂?」カツラは逡巡した。仮にも自分に気のあった男と裸の付き合いをしていいものかと。返事に窮していると遠くから小さな男の子の声がした。
「おじちゃん、みーっけ!」
二人が声の方に顔を向けるとかわいらしい男の子がとびきりの笑顔で立っていた。
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