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第78話 9-15
家に着くとナラはご機嫌で母親に今日のことを報告していた。
「すごい楽しかった。最後は二十人ぐらいでドッジボールしたんだよ!」
ハチスはそんなナラを横目に姉からの会話にも素っ気無く答えそのままバスルームに向かった。
「くそっ、タイガのやつ。完全にやられた!」ハチスはカツラたちがボールを忘れて行ったことに気付き、ナラを車で待たせ、カツラたちの所にボールを届けに行った。まさか二人があんなことをしているとは夢にも思わなかった。「いや、違う。あの状況はタイガが仕組んだんだ。まんまと罠にはまってしまった。」
ハチスはシャワーを浴びるために服を脱ぎ熱い湯を頭から浴びた。ハチスにとって一番ショックだったのはなんといってもカツラの表情だった。カツラはタイガに全てを委ねていた。そして恍惚な表情でタイガとの深いキスを堪能していた。やつにはなにをされてもいいというように。タイガに回されたカツラの腕の動きも忘れられない。悔しいが本当にタイガを愛しているんだ。タイガはハチスにとっては気に入らないやつだが、カツラにとっては愛しい男。カツラはずっとハチスにそう言っていた。「マジで失恋確定だな。」
甘い瞳で見つめ合う二人の姿が目に焼きついて離れない。ハチスが目撃したのは二人のキスの現場だが、まるでセックスを目撃してしまったような衝撃があった。今頃タイガはカツラを抱いているに違いない。「くそっ、くそっ!やり切れない。まだこんなに好きなのに。諦める羽目になるなんて。」自分の胸に燻 るカツラへの思いを冷ますため、ハチスは熱い湯を冷水に切り替えた。
その夜、ハチスはまたあの友人に電話をかけた。
「ハチス?」
数日後、いつも利用する店のそばでカツラはまたハチスと出会った。彼の表情は暗い。カツラは気付いたがそのことには触れなかった。
「これ。」
ハチスが差し出したのは二通の封筒だった。
「ナラがカツラとタイガに手紙を書いたんだ。遊んでくれたお礼にって。」
「ナラが?ありがとう。」
カツラはハチスからナラの手紙を素直に受け取った。
「俺、今夜合同パーティーに行ってくるわ。」
「そうか、いい子がいるといいな。」
おまえに言われても嬉しくないんだけどとハチスは思いながらも気持ちを整理するため一呼吸間を置く。
「応援してくれ。」
そう言ってハチスは拳をカツラに向けた。カツラもハチスをまねて拳を作り、拳同士を軽くタッチさせた。
「年下狙いでいけよ。」
「ああ。」
ハチスはそのまま片手を上げカツラとすれ違い、立ち去って行った。カツラはハチスの後ろ姿を見つめていたが、店に戻るためその場をあとにする。
しばらくしてハチスはカツラを振り返った。立ち去るカツラの後ろ姿に心の中でそっと呟く。「俺はまだ諦めたわけじゃない。距離を置くだけだ。タイガと別れたら即おまえを奪いに行く。それまではさよならだ、カツラ。」
「ハチスが今夜パーティーに?」
「そう、もう安心だろ?ハチスはタイガを意識しすぎたんだな。あいつは俺に気があるんじゃなくて、おまえになんだよ。」
「おい、気持ち悪いこと言うなよ。あんなやつはごめんだ。」
タイガはソファに腰掛け、ナラが一生懸命書いた手紙を嬉しそうに読んでいる。
「ナラは確かにかわいいし、いい子だな。また遊んでやりたいけど。」
「同級生なんだからハチスとも仲良くしたらいいだろ。友達がいない俺が言うのもなんだけど。」
タイガがとなりに座るカツラの顔をじっと見た。
「なに?」
「学生時代、友達いたろ?」
「まぁ...。」
「残ってないのか?」
信じられないという面持ちでタイガが尋ねた。カツラはそんなに驚くことかと思いながらさらっと答えた。
「その...、いろいろあってな。」
「いろいろ?」タイガはカツラのことになるといつもの数倍頭の回転スピードが速くなる。「カツラはどちらかというと人を惹きつけるタイプの人間だ。惹きつけすぎてなにかトラブルがあったに違いない。」考える前に頭に浮かんだことが勝手に言葉となって出た。
「まさか、友達にせまられて体の関係になって友情まで終わったとかないよな?」
タイガがカツラの両肩をしっかりつかみ勢いよく畳みかけた。「タイガはなんでこういうことには勘が鋭いんだ?」カツラはまさにタイガの指摘通りのことがあったのを彼に伝えるべきか悩んだ。
「まさか?そんなこと、あるわけないだろ。ははは...。」
カツラが視線をそらしこう返事したことにタイガは確信した。そういうことがあったのだと。
またいつもの独占欲に支配されたタイガは、カツラに後ろを向かせ彼のズボンを下着ごと一気にずり下げ、白く豊満な尻を露わにした。
「ちょっ、タイガ、なにする気だ!」
いきなり尻を丸出しにされカツラは焦った。
「こいつがいけないんだな、悪い子だ!」
タイガはそう言ってカツラの白く豊満な尻に思い切り嚙みついた。
「痛ってぇっ!!」
カツラの白い尻にはタイガの歯形がくっきり残った。タイガはそれでは飽き足らずカツラの尻を舐めまわし、揉みながら強く吸ったりつねったり、パチンとわざと音が鳴るように叩いたりした。始めの噛み跡以外、タイガの尻への攻撃にこそばゆさを感じてケラケラ笑っていたカツラであったが、タイガがいつまでたっても尻を痛ぶるのをやめず、同じ場所を繰り返し叩いたりつねったりするので、徐々に笑っていられなくなってきた。その頃には散々もてあそばれたカツラの尻は美しい薄桃色に染まっていた。
「タイガ、痛い。マジで痛いからもうやめて。」
タイガに片手で抵抗できないように押えつけられていたカツラがとうとう懇願した。タイガもさすがにやりすぎたと思ったのか、保冷剤を持ってきてカツラの尻に当てだした。
「この尻を他の男にも好きなようにされたと思うと頭がおかしくなりそうだ。カツラ、俺どうしたらいい?」
「もう、さんざん好きにしたろうが。こんなことされたのは初めてだ。歯形ついてるだろ、絶対に。おまえじゃなかったら即お別れだ。」
「カツラ、愛してる。大好きだ。今夜はいっぱいサービスするから。」
タイガは涙目になっているカツラの頬に優しくキスをした。そしてこの美しすぎる恋人にこれからもやきもきさせられることがある、自分は覚悟をしなければと考えていた。
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