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第85話 10-6 (R18)

「待て、違うんだ、タイガ。待って。」  カツラはすぐにタイガの背中に抱きつき優しく声をかけた。タイガの心臓の音が自分の心臓の音と重なって聞こえる。カツラは自分が言ったことでタイガを傷つけてしまったのかとタイガの表情を見てほろ酔いがすっかり冷めていた。 「タイガ、こっちむいて。もう一度キスして。」 タイガはまだ体を固くしたままだ。 「なぁ、ほら。こっちむけって。」 「いや、でも...。俺、頭冷やしてくるから。」 「だめだ。今すぐ俺にキスするんだ。」 タイガはゆっくりと振り向いた。彼の視線は今だ下を向いたままだ。 「でも...、さっき嫌がった。」 「ああ。おまえがカエデといちゃつくからだ。」 「いちゃついてなんていない!話していただけだ。」 誤解を解こうとタイガが潤んだ瞳でまっすぐにカツラを見て言う。タイガが言い終わる間際に今度はカツラがタイガに唇を重ねる。深く舌を入れお互いを絡めさせる。 「タイガ、おまえは誰にも渡さない。俺のものだ。いますぐおまえがほしい。」 唇を僅かに離し、カツラが甘い声で囁いた。カツラのこの言葉にタイガのスイッチが入った。タイガの動きは素早かった。カツラに後ろを向かせ自分と彼のズボンを下ろす。カツラの豊満な白い尻が目に入った時にはタイガは既にカツラの中に侵入していた。 「ぅああっ、カツラっ!」 クチュンっ、クチュンっ、クチュンっ、クチュンっ、クチュンっ、クチュンっ...! 酒のせいかカツラの内側は潤い温かく、タイガは思うがままに激しく腰を動かした。 「ああ...、タイガっ!あっ...。」 いきなり背後から攻められたカツラであったが、そうなることを望んでいたのか歓喜の声をあげた。そして先ほどから自分が背にしていた木に両手を預け尻を突き上げタイガの激しい動きに酔っていた。 「いいっ、タイガっ…。いっぱい出せよ、俺の中に...ああっ、もっと...。もっと速くっ!」 カツラが言葉でタイガを煽る。 「カツラっ!」 タイガはカツラの言った通りに激しく腰を動かし続け、カツラの顔を振り向かせ濃厚なキスをする。二人は離れる気はなく深く深く繋がっていた。タイガはカツラ自身をつかみ取りそこにも刺激を与えながら腰の動きはますます速くなる。 「ぐっっ!はっ、はっ...!」 タイガがカツラの中で果てた。カツラもタイガに二つの場所を攻められ果てていた。しかし二人はまだ隙間のないくらいにぴったりとくっつき熱いキスも続けたままだった。 しばらくそのままでお互いの呼吸が落ち着いたところでようやく見つめ合い距離をとる。見つめ合う二人の瞳は愛を確認し合い満足感に満ちていた。カツラがくすっと笑った。 「こんなところでヤッテしまったな。」 体の向きをタイガの方に正し、話しながらもタイガの首元に愛撫をする。 「うん...。でもかなりよかった。」 「外で興奮したのか?俺も初めてだ。誰かに見られていないか?」 カツラの言い方は別に見られていても構わないという感じだ。 「まさか。みんな店内の酒と景色に夢中だよ。かなり大きな音で曲も流れているし。」 「最初からそう計算づくでここに連れてきたのか?」 「まさか!」 タイガはもう何度も打ち合わせのためにこの店に足を運んでいる。恋人がこっそり逢瀬を交わす場所ぐらいとっくに確認済みのはずだ。カツラはお見通しというようにまたタイガにキスをした。 「戻ろうか?」 「うん。」 タイガは胸元に忍ばせていたハンカチでカツラを拭ってやる。自分が出してしまったものまではぬぐい切れないので、(かが)みこみぺろぺろとカツラの尻に顔を(うず)め舐め始めた。 「あっ、タイガっ...。」 今先ほどまで激しく攻め立てられていた場所に次はぺろぺろと甘い刺激を受け、カツラは恍惚の表情をし、必死に声をあげるのを我慢している。 カツラの股座(またぐら)がすっかり綺麗になるころにはカツラは背中を大木に預け、片足の太ももを膝をついたタイガの肩に乗せる格好で上半身を逸らせ(あえ)いでいた。 「はぁ、はぁ、はぁ、...んっ、...タイガっ。」 「カツラ、綺麗になったよ。」 タイガはカツラを舐めつくし、満ち足りた表情でカツラに下着とズボンを穿かせた。そしてまたキスをする。タイガのキスは二人の愛液の味がした。 「旨い酒で口直しするか?」 「うん。」 タイガたちが仲良く二階へ戻るとフジキが一人、カウンターで酒をちびちびと飲んでいた。 「フジキさん、カエデは?」 「タイガ。席を離れた隙にいなくなってしまって。カツラくん、具合は大丈夫かい?」 「え?あ、まぁ、大丈夫です。良くなりました。」 カツラとタイガはお互い目を見合わせ微笑んだ。  その後再びソファーの席へ移動し、しばらく三人で酒を(たしな)みながら会話をした。タイガはフジキからカリンの話を聞き、カツラも興味深く聞き入っていた。 そろそろ帰るためにカエデを探しに行こうかと話していると、カエデがみんなのもとに戻ってきた。カエデは心なしか具合が悪そうだ。 「カエデ、大丈夫か?さっき飲んだの、きつかったか?」 フジキが心配しカエデに声をかけた。 「大丈夫です。少し外の空気に当たっていたら彼から連絡があって。しばらく話していたんです。」 カエデは伏し目がちに答えた。ちらっとカツラを見る。やはり彼は自分を見ている。また目があった。しかしそれは先ほどまでの刺すような視線とは違い、ただただ美しい翠の瞳の眼差しだった。  先ほど...。カエデは見てしまった。タイガとカツラの交わりの一部始終を...。激しく求め合い奪い合う二人の姿に衝撃を受けた。  タイガはかつて自分と付き合っていた。しかし今では全く知らない男に思えた。カツラへのタイガの接し方、求め方はカエデにしていたものとは180度違っていた。カエデはあんなに野獣のように激しく自分をさらけだしているタイガを見たことはなかった。  カツラを主人のように愛し、彼の言葉のままに素直に従うタイガ。今のカエデには別に愛する人がいて、タイガに対する独占欲はないと思いたかったが、胸の奥にはぽっかりと穴があいたような喪失感があった。自らタイガを突き放したのに、自分勝手な思いだとこんな自分にも嫌気がさしていた。「今日はもうめちゃくちゃだ。」カエデは混乱していた。

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