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第102話 10-23

 カツラは駆け足で先ほどカエデを目撃した場所まで戻った。まだそんなに遠くには行っていないはずだと思い辺りを見回す。  しばらくしてカエデと一緒に歩いていた男と似たような恰好の男が出てきた建物があった。「まさかここに入ったのか?」店のようだが、明らかに雰囲気がおかしい。普通の者なら入るのを避けそうな店だ。カツラはカエデがなぜこんな所にのこのことついて行ってしまったのかおおいに心当たりがあった。「こんな所、ヤバイ場所に決まっているじゃないか。」 世間知らずな太陽のような温かいカエデの顔が思い浮かんだ。カツラはどうしてもカエデを責める気持ちにはなれなかった。 「我慢すんなよ。気持ちいいだろ?」  カエデは両腕と両足を男たちに掴み上げられ、ソファに横にされていた。上半身は裸にされ、男から執拗に愛撫を受けていた。 胸や腹を男に遠慮なく舐め回され吐きそうだ。既にズボンを膝まで下げられ、下半身の下着の中に無遠慮に入れられた手から与えられる刺激にも吐き気をもよおす。 カエデの体は男からの刺激を全て拒否していた。もともとこういうことが好きでないカエデは固く目を閉じ、終わるのなら早く終わってくれとただひたすら祈っていた。 「もったいぶってないでもうはめればいいだろが。」 ボスの命令に男はもっと楽しみたいのにと残念そうな顔をし、カエデの固く閉じた唇をこじ開け無理やり舌を入れキスをした。 「んんんっ!」 「ったく。顔に似合わず強情だな。ひぃひぃ言わせてやる。」 とうとう男が自分のズボンのベルトを外しだした。 その時、入口側から男の一人が勢いよくこちらに飛んできた。 ガシャンっ!! 投げ飛ばされた男がボスの前のテーブルに見事にぶつかり、酒の入ったグラスが粉々に砕け散った。 「いったいなんだ!!」 急に響く大きな音にカエデは目を開けた。入口の方から現れた人物にその場にいる者すべてが息を飲むのがわかった。 「カエデ!大丈夫か?」 カエデはなぜここに今カツラがいるのかわからなかった。さっきの男はカツラがなげとばしたのか? 「おまえ誰だ?」 おたのしみを邪魔された男はカツラを舐めまわすような目で見た。 「彼の友人だ。合意じゃないだろ?彼を返してくれ。」 「ああ?お前が変わりに相手してくれるのならいいぜ。」 男の興味は明らかに今現れたカツラに移っていた。カツラをどう味わおうか、この後の行為を想像しているようなねっとりとした目でカツラを見ている。 「は?」 「待て。部下が失礼をしたな。君、私の下で働く気はないか?君ならかなり稼げるぞ。君みたいな上玉は見たことがない。きっと大臣クラスや国の要人、彼ら自身やその奥方達も...」 「あのさ、そんなことに興味ないから。カエデ、帰ろう。」 カツラを見てよだれをたらしていたボスは話を遮られた上に素っ気無い態度をとられ頭に血が上ったようだ。 「ふざけるなっ!ただで帰れると思うな。そいつを捕まえろっ!」 ボスの命令を待ってましたと言わんばかりに男たちがカツラに飛び掛かった。しかしカツラの身のこなしは素早く、男たちはカツラを捕まえることができない。それどころか一人、また一人とカツラに組敷かれていく。 カツラがこんなに強いとはカエデは意外だった。カエデを押さえつけていた男たちも加勢に向かうがあっという間にやられてしまった。 「動くなっ!」 カエデはカツラに気を取られ逃げるのが遅れてしまった。気づくとボスにうしろから羽交い絞めにされ、首元にナイフを当てられた。ボスからは据えた加齢臭がしており、気分が悪くなる。 「こいつ殺すぞっ!それともこのかわいい顔に傷つけるか?へへへ。」 ボスはそう言ってカエデの頬を汚いない舌でベロリと舐めた。 「ごめんなさい、カツラさん。」 「へぇ...おまえ、カツラっていうんだ。かわいい名前だな。」 カエデを人質に取られカツラは動きを止めていた。自分の前に立ち、勝ち誇ったように話す男をじっと睨んでいる。 「そんな怖い顔すんなよ。怖い顔もいいけどな、ハニー。」 男はカツラの頬にそっと手を添えた。そのままカツラの顔を引き寄せ遠慮なく舌を入れ濃厚なキスをした。二人の舌が絡み合う音が店に響く。 「おいっ、俺が先だっ!」 部下の男に先にカツラを奪われボスが声を荒げる。 カエデは見ていられなかった。自分のせいでカツラが男たちにいいようにされてしまう。こんなこと、タイガに知られたら...。もうタイガに合わす顔がない。タイガは二度と口をきいてはくれないだろう。それどころか一生恨まれるに違いない。カエデは涙を流して懇願した。 「お願い、その人を離して。僕、なんでもするから。」 「馬鹿がっ!あんな上玉見逃してたまるかっ!おい、いい加減やめろっ!」 男のキスはどんどん激しさを増していく。カツラを抱き寄せ服の上から彼の背中、尻をまさぐり出した。体は微動だにしないカツラであったが、なぜか男とのキスには応えている。自ら激しく舌を絡め、キスに夢中にさせ男を自分から離れられないようにしているようだった。 「おまえ、最高だ。」 男はそう呟きまだキスを続け、自分の股間をカツラの股間におしつけた。男は完全にカツラのとりこになっている。 「っ痛っ!」 カツラとのキスを堪能していた男がいきなりカツラから離れた。男の口には血がしたたっていた。カツラが男の唇を咬んだのだ。 「このじゃじゃ馬め。」 「おまえ、キスが下手なんだよ。今までした中で一番下手だ。」 カツラが口にしたたる男の血を舐めながら不敵に笑った。

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