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第120話 11-3
あの後、カツラはラバの誘いを何とか振り切り帰宅できた。というのも店長がカツラを気にかけ声をかけてくれたからだ。その帰り道、カツラは店長にラバについて初めて相談した。
「そうかそうか。もしかしたらとは思っていたが。こういうことも久しぶりだなぁ」
店長は当時を思い出したのかふふと笑った。
「笑いごとじゃないよ。彼女、しつこくて」
「お前も交わすの上手いからな。お前より上手 が来たということか」
「やりにくくて仕方がない。彼女、社会的権力を振りかざしてくるから」
「カツラ、そんなことは気にするな。彼女と気まずくなろうがうちのことは心配する必要はない。これでも味方は多い方だから」
しかし店長はもう一つ心配事があったというふうに話し続ける。
「ただ、暫くはカウンターは控えて厨房にいた方がいいな。あの人もまだ来てるんだろ?」
「あ。ははは...そうだった」
あの人とはカツラに気のあるもう一人の男の客である。その男が店に来たのはラバの初来店より少し前のことだった。
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「こんなに旨い酒初めてだ。次はこの料理に合う酒がいいな」
ウィローの代わりに入口そばのカウンターについた時に偶然その席に着いたのが彼だった。
酒もよく飲み話しやすい。客としてはやりやすいタイプの人間だ。カツラはついつい彼の話につき合ってしまった。
「君、誕生日は?俺、占いできるんだよね」
「占い?すごいね。俺は9月17日」
カツラは占いなどに興味はなかったが、客仕事なので彼が喜ぶような反応をした。そして咄嗟にタイガの生年月日を答えていた。
「オーケイ。ちょっと待ってね」
彼はそう言ってびっしりと書き込まれた数字の表を見ながら手帳に計算をし始めた。カツラはもともと占いなんて信じないタイプだ。そのためこの時彼と話した内容もすっかり忘れていた。
その後、男は店に訪れたが特に問題はなくカツラも話す機会はなかった。彼はいつもタイガが座る場所に座っていたからだ。奥にいるカツラがタイガ以外の客のためにわざわざカウンター内を移動することはない。たまたま会計処理や仕事の都合で入口近くに来た時に声を交わす程度だった。
「久しぶり。今日は例の日だね。これ」
カツラは久々に口をきいた男が何のことを言っているのかわからなかった。彼は小さな箱をカツラに手渡してきた。
「えぇと...?」
受け取りながらカツラは言いよどんだ。
「この間の占いで出ただろう?今日じゃないか、厄災の日!贈り物を受け取るといいから俺用意するねって話していたじゃないか」
そういえば言っていたような気がしないでもない。カツラは男の押し切るままに小さな箱の贈り物を受け取った。ちょうど手の平サイズだ。カツラは恐らく飴か何かだろうと推測する。
「お客さんからそんなもの受け取ったの?」
「この大きさじゃどうせ飴だろ」
店内でホリーと片付け業務をしているときにカツラが客から受け取ったプレゼントの話になった。
「チョコレートですかね?」
ウィローも興味深々だ。
「親身な客ね。厄災を避けるためにわざわざ用意してくれるなんて。また厄介な客じゃない?」
「彼はそういう感じはしない。話したのも最初だけだし」
「癖のない人だと思いますけど」
客の感想を二人から聞き、ホリーはじゃ、問題ないかと興味はプレゼントの方に移った。
「早速開けてみてよ?」
二人は手を止め、カツラが箱を開けるのを眺めた。
「手紙?」
包みをはがすと手紙があった。内容を確認する。
【これと一緒に君とすごせたら】
カツラは箱を開け中身を取り出した。ぱっと見やはり飴だと思った。手に取り箱から取り出すと薄い正方形の袋は長く連なっていた。それでようやっと理解した。
「カツラ...これって」
カツラは目の高さまであげて確認する
「コンドーム...ですよね?」
ウィローの言葉にその場の三人は顔を見合わせ固まった。
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