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第123話 11-6
カツラは最近ストレスが溜まっていると自覚していた。自分に落ち度がないのに仕事を制限され、それがいつまでつづくかわからない。
自宅に着くと優しく出迎えてくれるタイガがいる。彼がいなければ耐えられなかったかもしれない。カツラはめっきりタイガに甘えまくっていた。自らタイガを何度も求め激しく抱かれる日々を過ごしていた。
タイガとしてはそんなカツラに不満はなかったが、いつもの様子とは異なるカツラの態度になにかあったのではとようやく気付き始めた。その日も激しく愛し合い、行為の余韻に浸り体を密着させたままキスをしていた。
「カツラ、最近なにかあったのか?仕事とか...」
カツラはタイガが自分を気遣ってくれたことが嬉しかった。彼に言うべきか迷った。余計な心配はかけたくない。しかし、カツラは胸の内を誰かに聞いてほしかった。
「タイガ。職場でいろいろあって」
「『desvío』で?なにがあったんだ?」
カツラはここ最近の出来事をタイガに言って聞かせた。タイガは冷静さを心掛けていたようだが、こめかみの血管が浮き出でぴくぴくと動いているのが分かった。
「その道専門の人に頼んだ方がいいんじゃないのか?一歩間違えれば犯罪になりかねない」
「もうわからない。こんなことは今までなかったから。俺のとらえ方も変わったのかもしれないけれど。お前と出会ったから」
タイガは本当につらそうなカツラを目にしてなんとか力になりたいと思った。タイガの腹の中では決めていた。タイガはそれとなくカツラから客二人の名前と社名を聞きだした。
「俺のとても大切な人なんだ。叔父さんにも近々紹介しようと思っていたところで」
「お前にそんな相手がいたとはな。どんな人なんだ?」
「すごく綺麗な人だ。しっかりしていて、優しくて。料理も上手いし」
「そうか。そんな人物なら会ってみたいな」
「必ず紹介する。約束するよ。その前に叔父さんの力をかしてほしいんだ」
「あの女、来なくなったわね。もうそろそろ二週間でしょ。カツラ、カウンターに出てもいいんじゃない?」
「そうだな。もう一人の男の方もぱったりと来なくなったな」
店長とホリーがなにか言いたげな顔でカツラを見る。
「なんだよ?俺はなにもしてないけど?」
「ほんと?我慢できずにおかしなことになってない?」
「あのな、それはいったいどういう意味だ?」
「とにかくうちとしては問題はなくなったことだし。一見落着かな。また店に顔を出せばその時に対応を考えればいい」
「そうね。用心棒代わりにシュロもいるんだし」
ここしばらくカツラの頭を悩ませていた件が知らぬ間に解決した。店長の許可も出、ようやくカウンター業務に戻れる。
「セージだけど彼女は厨房もいけると思う。覚えが早い。フヨウより仕事ができる」
カツラは厨房にいる間、セージに手取り足取り仕事を教えていた。飲み込みが早いセージに仕事を教えるのは楽しかった。
ただカツラはなんとなく気付いていた。セージは自分に気があると。近い距離で接触しすぎたと思ったがもう遅かった。彼女が自分に向ける眼差しは恋する女のものだった。
一難去ってはまた一難。カツラはセージにはこのまま店を続けてほしかった。しかしいつも通り自分に気のある者には素っ気無い態度で接するつもりでいた。
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