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第124話 11-7

 セージは仕事を覚えるのが早く、接客も悪くない。ホールも厨房もそつなくこなす。 みんなが彼女を気にいっていた。  カツラがカウンター業務に戻ってから、カツラとセージが同じ場所の業務につくことはない。カツラがカウンターに出ているときはセージは厨房、カツラが厨房の時はセージはホール。 今店のシフトを作成しているのはカツラだ。この間までは厨房で優しく事細かに仕事を教えてくれたカツラが急に素っ気無くなったことにセージは気付いていた。セージの中でカツラに対する不満がくすぶっていた。 「だから言ったじゃない。カツラさんはダメだって」 マキが言わんこっちゃないという感じでセージにダメだしをした。 「なによそれ、意味わかんない」 「きっとセージの気持ちに気付いたのよ。凄く辛辣になっちゃうの、カツラさん」 「どうして?私、まだ何もしていないのに」 なにもしていないとはきっと告白のことだ。しかしカツラにとっては告白の有無は関係ないのだろう。 マキは綺麗な男が苦手だ。男っぽい男の方が好きでよかったと心底思うようになっていた。『desvío』で展開されるカツラを中心にした恋模様は見ている分には楽しいが当人達には同情した。カツラのような人間離れした者の心を射止めることなど、普通の人間では不可能なのではとマキは思っていた。 「カツラさん、年もかなり離れているじゃない?ウィローさんなんていいと思うけどな」 なんとかセージの気を逸らそうとマキは提案するがセージの返事は素っ気無いものだった。 「だったらマキがウィローさんとつき合えばいいじゃない」 今夜セージはホールだった。シフトを確認するとカツラは厨房だ。またかと小さなため息をつき自分の持ち場に向かう。 「おはよう、セージ」 ホールの開店準備をしていると、厨房にいるはずのフヨウが声をかけてきた。 「おはようございます」 「あのさ...ちょぉっと教えてほしいことがあって。厨房のことなんだけど」 「え?」  フヨウの話によると、彼は慣れない仕込みに手を出し失敗してしまったそうだ。そのため無駄にした食材の調達に買い出し担当であるウィローに懇願したため、今日の厨房担当でもあるウィローの出勤が少し遅れるとのことだ。フヨウは仕事が雑なので、いまだに厨房も一人で任せることはできない。 「下準備はすんだんだけど。また勝手にやって失敗してもね。セージ、だいたいわかるだろ? 教えてくれない?」 フヨウからの依頼はセージにとって願ってもないことだった。遅番シフトで今夜カツラが厨房に入る。仕事が中途半端になってしまうから、ウィローが戻ってきてもこのまま今日は厨房にいたいとお願いしようとセージは決心した。 「わかりました。私も完璧ではないんですが、一緒にやりましょう」  その後、頼りないフヨウを心配しウィローが急いで出勤したが、セージのフォローでスムーズに業務は進んでいた。セージは並行してホールの仕事までこなしていた。 「セージ、フヨウのフォローありがとう。助かったよ」 「ウィローさん、今夜はこのまま厨房でいいですか?中途半端になってしまうから」 はにかみながら頼んでくるセージにウィローは断ることができなかった。 今夜厨房にはカツラが入る。ウィローもセージの気持ちには気づいていた。カツラがセージを避けていることも。しかし、かわいいセージに言いよられたウィローはだめだとセージの要求をはねのけることができなかった。

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