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第125話 11-8

「おはよう」 「おはようございます」 「おはようございます」 遅番シフトでカツラが出勤した。厨房で作業をしているフヨウとセージが挨拶をする。 厨房にいるはずのウィローの姿はない。カツラは厨房を通りすぎ店内の方へと向かった。 カツラはレジのそばにあるシフト表を確認する。自分が作成したまま今夜セージはホールになっている。 「カツラさん、おはようございます」 厨房にいるはずのウィローがカツラに声をかけてきた。無言でカツラが見つめるとウィローは石のように固まった。 すごい圧だ...怖いとフヨウは思いながら今日あったことを順序だって説明した。その間カツラは一言も発しなかった。無言で話の先を促され、ウィローは生きた心地がしなかった。 「わかった。ウィローは今日はホールに入れ」 カツラは無表情でそう言って厨房に戻って行った。 「今夜はウィロ-がホールになったから、フヨウには俺が付く。セージはオーブンの方やって」 「はい」 「カツラさん、よろしくお願いしまぁす」  セージは仕事も細かく早い。一人でも厨房は完璧だった。 カツラは主にフヨウに付きっ切りで仕事に当たった。その日は特に意識してセージを避けたつもりはなかったが、セージはそうは感じなかったようだ。  閉店近くになり片付けながら明日の準備もする。客のオーダーが落ち着いた店内にフヨウはホールの練習に出た。厨房はカツラとセージの二人になった。 「カツラさん」 在庫の確認のためしゃがんで冷蔵庫を覗いているカツラにセージが背後から声をかけた。 「ん?」 カツラはセージを振り返らずに返事をした。 「私の思い過ごしならすみません...。カツラさん、私のこと避けてますか?」 カツラは冷蔵庫に入れている手の動きを止めた。まさかセージがこんな直球でくるとは思っていなかった。立ち上がりセージに向き直り答えた。 「別に避けていない」 「本当に?今夜だって全然...。シフトもかぶらないし」 「あのさ。悪いけど俺、そういうの無理なんだ」 「そういうのって何ですか?」 「なにって...」 か弱い見た目に反してセージは強い。カツラは対応を間違ったかと頭をフル回転させていた。 「私、カツラさんに対して何もしていません」 真っすぐカツラの目を見てセージが言った。確かにセージの言う通り、セージからは何も言われていないしされていない。 「そうだな...何もしていない」 カツラもセージをまっすぐ見て答えた。 「だったら普通にしてください。私、もっと仕事を覚えたいんです。カツラさんから」 「そうか...。わかった」 カツラの言葉を聞いてセージがにっこりと微笑んだ。カツラもセージの対応に意表をつかれた。つられて優しく微笑んだ。 「あの...俺、お邪魔ですか?」 厨房入口からフヨウが申し訳なさそうな声で尋ねた。 「なに言ってんだ。早く手伝え」 カツラは何事もなかったように答えた。セージは頬を染め片付けに専念する。そんな二人の様子をいじけた顔で見ていたフヨウはセージに嫉妬していた。

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