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第143話 11-25

フヨウはあれから頻繁にユーリの元に通っていた。しかし、虚しさがつのるばかりで気持ちは一向に晴れなかった。 「どうしても忘れられない人がいたらどうしたらいいんだ…」 長年の友人のクレムに話すつもりはなかったが、酒のせいもありフヨウはつい本音を呟いてしまった。 「そんなの、新しい恋するしかないだろう」 「簡単にいうなよ」 「最終手段で店いけばいいじゃん。抜いてもらえっ。すっきりするぞ~」 フヨウと友人のクレムはいつもの行きつけの店で飲んでいた。他人事だと思い適当に応えるクレムを睨みつけフヨウはぼそりと呟いた。 「もう行ったし...」 「えっ?それでもだめなのか?そんなにいい女なのかよ?」 「めちゃくちゃいい...。ただ…男性なんだ」 「へ?」 数秒後、理解したクレムはフヨウの両肩を掴み慌てたように問い詰めた。 「ちょっと待て!お前いつから目覚めた?」 「んなんじゃないからっ。あの人は特別で...」 フヨウは半分空いたグラスを見つめながら話し始めた。カツラに対する思いを。 「ふーん。そりゃ相手が女じゃすっきりしないんじゃん?お前の思い人は男なんだから。お前、そいつに掘られる覚悟あんの?」 「え?」 クレムがじっとフヨウを見つめてきた。フヨウの覚悟を試すように。 「あるっ!あの人にならなにされてもいい!」 肌を合わせられるのなら...。しかしフヨウは確信していた。カツラの恋人のタイガはかなりガタイがよかった。カツラを女のように優しく包みこむように抱きしめていた。 「おそらくカツラさんは抱かれる側だ」そう思うとフヨウはカツラの中に入りたくておかしな気持ちになるのだ。 カツラの肌はいつも透き通るように白く美しい。一瞬だがその素肌を間近に見たフヨウはきっとカツラの秘密の花園も期待を裏切らない美しさに違いないという確信があった。そして「あの人の中はどんな感じなのだろうか」と想像するだけで股間がはちきれそうになる。同性相手にこんなふうに体が反応するなんて自分でも不思議だった。 「だったらさ。男同士の店行けばいいじゃん。それですっきりしてこいっ!」 「え!」 「それで嫌悪感や体が反応しなかったらお前のその思いは単に思いこんでいるだけってことだから、簡単に忘れられるさ」 「思い込み...」 フヨウは長年の友人のアドバイスに従い、人生で初めて男同士のための店へ行った。 「黒髪、翠の瞳の子はいないんです。当店で人気ナンバー1のイジュはどうですか?見事なプラチナブロンド、透き通るような白い肌に鮮やかな青い目です」 フヨウは男性専門の店の受付から説明を受けていた。プラチナブロンドに反応する。以前カツラがコスプレをした姿はまだ瞼に焼き付いている。 「じゃ、その子でお願いします」 店員が見せたナンバー1の写真の男性はたしかに綺麗な子だった。しかし、カツラには敵わない。 自分はいったい何をしているのだろうか…。こんなことをしているのをカツラに知られたら彼はどんな反応をすのだろう?…いや、興味なんて持ってくれない、つれないあの人は...などとくよくよと思いを巡らせていたら、受け付けで渡されたフヨウの番号が呼ばれた。 「ガチガチだね。初めてかな?緊張する?」 「え...まぁ」 さすがにナンバー1だけあってイジュには華があった。透き通るような白い肌、話し方も接しやすくソフトだ。 イジュは確かに綺麗な男だ。ただ、全てにおいてカツラには劣っていた。フヨウは今目の前にいる男相手では体は反応しないのではと思えてきた。 「その...好きな人がいて。その人だと思ってやってもいいかな?」 「そうなんだ?いいよ、君のやりたいように。僕と同じ容姿なの?」 「髪の色が似ているときがあった。あと...肌の感じが似ている...かな」 「そう。大丈夫、どうしたらいいか教えてあげるから。君はその人のこと考えて」 フヨウはイジュが言うように自分に暗示をかけた。 白いキメの整った肌に唇を這わせる。カツラだと思いながら。目を閉じ行為に及んでいると、そう思えなくもない。 大きく開脚されたイジュの足の付け根の部分はとても綺麗に処理されていてフヨウは驚いた。同じ男性だとは思えなかった。 イジュに言われるままローションを手に取り秘部に指を埋める。 「そこ、いいっ!もっと動かして」 「ふっ...」 イジュが艶めかしい声をあげる。その部分だけに注目し、これがカツラのモノなのだと思うと自分の分身はムクムクと起き上がった。「カツラさんっ、あなたの中に入りたいっ」フヨウはカツラがもっと気持ちよくなるように指を執拗に動かす。 「あっ!!」 イジュが先に果てた。彼はフヨウの立派に勃ったモノを見て、ぺろぺろとほおばりはじめた。さすがプロだけあって、イジュの舌づかいはうまかった。 見下ろすと顔は見えず、プラチナブロンドの男が自分のモノをしゃぶっている。 「カツラさん!」 以前カツラがプラチナブロンドの姿だった時を思い出し、今目の前の男と姿を重ねた。 フヨウはイジュの頭を持ち、思い切り腰を動かした。「カツラさん、カツラさん、好きだ、好きだっ!」カツラに自分のものを頬張られていると思うと股間はいよいよ固さを増し限界を迎えそうだ。数回動かしたところで白濁を勢いよく口の中に出す。 フヨウのモノを飲み込んだイジュは顔をあげにやりと微笑んだ。 「はぁはぁ、カツラさん...」 「ちゃんとイケたね。ほんとに好きなんだね、カツラだっけ?カツラだと思ってやって。次は素股で」 フヨウはその後、バックからの素股でまた果てた。カツラと行為に及んでいると思いながら。 この店は本番がないので最終的には男同士のセックスがどんなものかわからないが、自分はカツラのことは本気で、彼とならセックスできることがわかった。「想像しただけでこのありさまだ。本人とだったら…」フヨウは脳裏にカツラの顔を思い浮かべた。彼の笑った顔、怒った顔、酒の説明をしている自信に満ちた顔...。するとフヨウの股間はたちまち勃起した。「諦めるためが、気持ちの確認をしただけじゃないか。」イジュはフヨウの勃起した股間を見てニヤリと微笑む。イジュは「まだ時間はあるから」と言い、再び行為に及んだ。 フヨウは同じ男ならカツラ以外とセックスする気はさらさらなかった。この店はそれきりにし、フヨウはまたユーリのいる店に逆戻りをした。

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