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第145話 11-27
いま、なんて言った?こども?こどもができたってぇ!!フヨウは自分の身に振りかかろうとしている災難から逃れるために高速で頭を働かせた。ユーリは仕事上、いろんな男と体の関係を持っている。自分のこどもとは限らないと。
「俺のこどもってどうしてわかるんだよ!」
「中だししたのはフヨウだけだからよっ!」
「だからつけてただろっ!」
「はあ?興奮しすぎてそのまま何回もヤッたじゃん!それにエッチしたのはフヨウだけなんだから。間違いないでしょ!」
「それは」
「フヨウ、場所変えてやれ。事務所つかっていいから」
聞くに堪えないといった感じでカツラがフヨウに言った。フヨウはパニックになりすっかり今自分がどこにいるのかも忘れてユーリと大声で言い合いをしてしまっていた。しかも内容からしてユーリのことをよく知らない者からしたらフヨウは女の敵だ。
「カツラさん...。本当に違うんです。俺はそんなつもりじゃ...」
ただあなたのことが忘れられなくて。フヨウはカツラに伝えられない思いを飲み込む。フヨウはカツラにだけは誤解されたくなかった。しかしカツラはフヨウの言い分には応えず目を逸らしため息をしただけだった。
カツラの素っ気無い態度にユーリはここまで相手にされていないなんてと少しフヨウがかわいそうに思えてきた。カツラの身代わりで激しく求めながら抱かれたユーリはつれない態度を取られているフヨウに同情してしまった。
「おにいさん、フヨウにチャンスあげたらいいのに。一度だけ、エッチしてあげなよ!天国にいけるよ?」
「は?」
カツラはユーリから話を急に振られた上に内容も内容だったせいか、怒りのあまりこめかみに青筋がたった。ウィローはしっかりと目撃した。
「そうしたらフヨウは納得して新しい一歩を踏み出せるかもしれないでしょ?それにもしかしてもしかするとお兄さんがフヨウから離れられなくなるかも?フヨウ、エッチすごくいいの!情熱的で」
フヨウは思いがけないユーリからの声援に期待を膨らませた。「カツラさんが俺から離れられなくなる!もちろんたくさん愛してあげる!」フヨウは一瞬素肌を重ね合うカツラと自分を想像し、気持ちが高ぶった。期待した眼差しでカツラを見る。
しかしカツラの表情は氷のように冷たくなっていた。彼は普段の数倍美しく見えたがそのせいで余計に非情に見えた。
「お前らの喧嘩に俺を巻き込むな」
静かに冷めた口調で言いはなった言葉はこの上なく迫力があった。言われたユーリは「こ、こわいっ」とフヨウの影に隠れた。
カツラがぎろっとフヨウを睨みつけた。有無を言わさぬとてつもない圧だ。
「はやく、行け」
フヨウに対してゆっくりと発せられた言葉は止 めだった。
「あ、は、はい」
フヨウはユーリの手を引き事務所へと向かった。
結局話し合いは平行線のまま、ユーリは女の勘で分かるのだと言うが、フヨウとしては納得がいかず、責任をとるのなら自分のこどもだとわかってからにすると言い切った。
ユーリは確かにフヨウのことを気にいり、本当はNGだが内緒でフヨウと体の関係を持った。それが店にばれてクビになったというのだ。しかし、体の関係を持った客がユーリには悪いが自分一人とはフヨウは思えなかった。
フヨウは不機嫌なユーリを裏口から先に帰し、店内へと戻った。
「終わった?話し合い」
みんな帰ったようで、店内にはウィローしかいなかった。
「平行線のままで。あの...カツラさんは?」
「先に帰ったよ」
ウィローは申し訳なさそうにフヨウに伝えた。
「俺...また嫌われちゃいましたかね?」
「フヨウを店に引きとめたのはカツラさんだろ。あの人は細かいことをいちいち気にするタイプじゃないから。」
「でも...」
「さっきの子をカツラさんの代わりにしていたことを気にしているのか?カツラさん、フヨウの気持ちは知ってるんだから、そんなことで怒ってないよ。」
ウィローは優しく慰めてくれたがさっきの激ギレのカツラのことを思い出すと、フヨウは次にカツラと会うときが憂鬱だった。
大好きな人だからいつもそばにいたいし会いたくて仕方がないのに会うのが怖い。
翌日。フヨウは複雑な気持ちのままカツラとの仕事の日を迎えた。
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