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第158話 13-3
「早速あの子のママに連絡するの?」
ホリーが今後の予定を確認する。
「手紙を持ってた。どうしてもこの三日間だけ面倒をみてほしいと。この場所を知ったのは学生時代の友人から聞いたらしいな」
「彼女のママ、ちゃんと三日後に迎えに来るかしら?」
「心配ない。名刺が入ってた。ほら」
ホリーはカツラから渡された名刺を見る。
「結構すごいじゃない。部長って」
「昔からまとめ上手な子だったよ。やり手みたいだな」
「今夜店は暇だからもうあがったら?早く寝かせてあげた方がいいだろうし」
「そうだな」
「カツラ...タイガ君は大丈夫なの?」
ホリーは少し聞きにくそうにカツラに尋ねた。
「あいつは話のわかるやつだから。不本意だけど友人の子には間違いないからな」
カツラはホリーの提案通り、ミナを連れて帰宅した。
カツラからの話を聞いたタイガは複雑な思いだった。カツラは間違いなく、そのエリアとかいう女と肉体関係はあったんだ。過去のことだけど...。本当にカツラのこどもじゃないのか??
「タイガ?」
「あ、うん。聞いてるよ」
「カツラも疲れているだろ?汗流してきたら?」
カツラはタイガの目をじっと見た。本当に納得したのかと言いたげだ。しかしタイガが押しだまったままなので、このままここにいてもどうしようもないと思ったのかカツラは「いってくる」といいバスルームに向かった。
タイガはベッドに先に入りカツラを待つ。明日からしばらく会えない。今夜は心のままにカツラを抱くつもりだったが、無理だと思い瞼を閉じ眠ろうとする。しばらくすると寝室のドアが開きカツラがベッドに入ってきた。
タイガの唇にカツラの唇が触れた。何度もタイガの下唇を甘く吸い、そっと舌を入れてきた。タイガは瞼を開けた。
「カツラ...」
「タイガ、気になることがあるのなら言ってくれ。明日からしばらく会えない」
タイガはカツラを下に組敷いた。
「違うんだよな?」
「ミナのことか?違う。俺の子じゃない」
カツラはタイガの目を見つめ言った。
「俺にはタイガ、お前だけだ」
カツラがタイガの胸元に手を当てる。カツラの瞳は嘘は言っていなかった。タイガはカツラにキスをし当初の予定通りカツラを激しく抱いた。
翌朝。タイガが出張の用意をしているとミナが起きてきた。ミナはもう服を着替え終わっていて、タイガを一瞥しただけで洗面所に向かい髪をとかし始める。肩で綺麗に切り揃えられた黒髪を優雅に梳かすミナの姿は、カツラと同じ自分の黒髪を誇っているようだ。
無言でタイガのそばを通り過ぎ、ソファに座り自分の携帯をいじり始める。どうやらミナはカツラのパートナーのタイガを毛嫌いしているようだ。ミナからすれば、彼女の母親のライバルになるタイガは邪魔な存在なのだろう。
しかしタイガはカツラの言葉を信じていたし、確固たる証拠を示すために行動を起こすことにした。洗面所へと向かい目的のものを手にしそっとハンカチに包みこむ。
昨夜、またカツラを激しく抱いてしまった。そのためカツラはまだ眠っている。「出張から帰るころには全てケリがついている」そう思いタイガはカツラを起こさずに静かに家を出た。
「ミナ、おはよう。早起きさんだな」
タイガが家を出て数分後、カツラが起きてきた。カツラの姿を認めミナの表情がぱっと明るくなる。
「おはよう!パパ!」
カツラはにっこりと微笑みミナの隣に腰を下ろした。
「ミナ、大切な話があるんだ」
「なぁに?」
「ママからなにを聞いたかわからないけど、俺はミナのパパじゃないよ」
カツラの言葉にミナの目が潤んだ。カツラは言うべきか迷ったが、期待させてもかわいそうだと思いミナに真実を伝えることにした。
「ママとは付き合っていた。でもすぐに別れたんだ。結婚の約束もしていない」
「じゃ、どうしてママそんなこと言ったの?嘘ついたの?」
「それはママに聞かないとわからない」
ミナは顔を伏せ泣き出してしまった。カツラはそんなミナの頭をよしよしと撫でていた。しばらくするとミナが「痛い、痛い」と言い出した。
「どうした?」
「目がっ」
「目?見せてごらん?」
カツラの言葉に従いミナが顔をあげた。カツラはミナの目を見る。よく見るとミナの目にはまつげが入っていた。
「ミナ、まつげが入ってる。泣いて入ってしまったんだね。取ってあげるから。よく見せて」
カツラが手を洗い優しく目の中にあるまつげを取ろうとする。すると一緒に目の中にあった翠色のカラーコンタクトが取れた。
ミナの本当の瞳は薄い茶色だった。ミナは翠色のカラーコンタクトをはめていたのだ。
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