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第170話 14-10

もう外は暗く今日も夜が訪れた。 タイガとカツラはあれからずっとお互いを求め愛し合っていた。こんなに長い間セックスをするのは二人が初めて結ばれた日以来かもしれない。 カツラの体にはタイガがつけた無数のキスマークがある。タイガにもカツラほどではないが、カツラがつけたマークがある。 カツラの秘部はタイガの愛液で外も(なか)もトロトロだ。しかしそれがタイガと愛し合った証拠だと思うと心地よく、タイガ自身はもう自分の内側にいなくともまだタイガに抱かれている気分にカツラはなっていた。 カツラはタイガの分厚い胸板を優しく手で撫でていた。その手にタイガが自分の手を重ねる。 「タイガ...俺...、お前に惚れてた」 「え?」 カツラがぽつりと言った言葉にタイガが顔をあげた。 「記憶を失くして...。最初は戸惑ってお前にきつく当たったけど。やっぱり俺はお前のことが気になって」 カツラがタイガに顔を向ける。少し照れたような表情で話し続ける。 「最近では自覚していた。タイガを愛していると。でも恥ずかしくて素直に気持ちを伝えられなかった」 「カツラ...」 カツラがタイガの上になり顔を覗き込む。 「タイガ。お前はやっぱり俺には特別なんだ。俺から離れないでそばにいてくれてありがとう」 カツラはタイガに唇を重ねた。舌を絡ませ唇を吸う。 「俺、嫌なやつだったろ?」 カツラが自嘲気味に尋ねた。 「そんな...」 タイガはカツラを下に組敷きカツラに確認したかったことを聞いた。 「俺と会う前は女性とばかりつき合ってたのか?男とは久しぶりだって」 「え?ああ、あの件か」 カツラは記憶を失くしてからタイガと初めてセックスをした日のことを思い出していた。 「気になるか?」 タイガが気にしていることをわかってカツラが片眉をあげタイガに質問した。 「めちゃくちゃ気になる」 タイガのしかめっ面を見てカツラは満足そうに答えた。 「つき合うって程でもない。本当に二、三回会う程度で。あの当時は男の方が面倒な奴が多くて。言っとくけどそんなに頻繁じゃないからな」 タイガは優しくカツラの額を撫でながら聞いていた。まだあるらしくタイガは次の質問をカツラに投げかけた。 「ミナちゃんだっけ?どうなった?」 「俺の子じゃないとい言ったろ。本人にも伝えて解決済さ」 「カツラ、念のため、DNA鑑定に出したんだ。もちろん親子じゃなかった」 カツラはタイガのこの行動には驚いたようだ。 「タイガ、いつの間に?お前、抜け目のないやつだな。俺が信用できなかったのか?」 「信用はしてた。ただ、あの子にかなりしたたかさを感じたから。きちんとしたものがあった方がいいと思って」 「お前は本当にくそ真面目だな。そういうところ、たまらなく好きだ」 カツラがタイガにキスをする。そのまま深いキスを交わし...。タイガはカツラの首元に愛撫を始めた。 「なぁ、タイガ」 「ん?」 「あの紙、あるか?」 タイガがカツラの顔を覗き込む。カツラがなんのことを言っているのかタイガにはピンときた。 「婚姻届けのことか?」 「ああ」 「あるよ。それがどうしたんだ?」 「ちょっと貸してくれ。すぐに返すから」 「いいけど...?」 カツラは訝しむタイガを下にし、チュッとキスをしベッドから出た。 「シャワー浴びてくる。紙、出しておいて」 「あっ、カツ...」 タイガはもう少しカツラとベッドでいちゃつきたかった。しかも婚姻届けを出すように言われどうするつもりなのかと不安になった。 一人でこのままベッドにいても仕方ないのでタイガはガウンを羽織りソファに腰を掛けていた。しばらくするとカツラがシャワーを浴び終わったようだ。 リビングに来たカツラからは石鹸の香がする。スラックスに形のよいシャツと全くの普段着だが、今のカツラはとても美しかった。黙って見とれるタイガにカツラが声をかけた。 「紙、あるか?」 「えっ?あっ、うん。これ...」 タイガが挙動不審に紙をカツラに差し出した。カツラはタイガから受け取り、折りたたまれた婚姻届けを開いて中を確認する。 「少しの間借りる。タイガもシャワー浴びてろ。戻ったら一緒に出かけるから」 「カッ」 タイガがカツラの名を呼び終わる前にカツラはさっと身をひるがえして出て行ってしまった。 どこにいったんだとタイガは急に不安になった。 しかしタイガはカツラは戻ると言っていたことを思い出し、汗を流すためノロノロとにバスルームへと向かった。

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