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第177話 15-3

故郷に戻るのはいつ以来だろうか。カツラの育ての親である祖父は自由な考えの人だ。 祖父は大学入学を機に地元を離れたカツラにとりたてて顔を見せにこいと言うことはなかった。彼はお互い会いたいときに会えばいいという考えの人だ。無理強いは決してしない。カツラも祖父に似たのか同じような考えだったので、ついつい地元から足が遠のいていた。 「タイガに会うまでは仕事が楽しかったからな」カツラはこれまでの人生を思い返していた。『desvío』で働き始めてからは酒と仕事に夢中になった。サービス業のためあえてまめに長期休暇をとらなかった。ここ一年は伴侶となったタイガに夢中だった。思い返せば祖父の顔を見たのは祖母の葬儀があった三年前だ。 「自由にさせてくれた祖父にタイガを紹介して早く安心させてやりたい。俺は幸せなんだと」自由気ままにやりたいようにやらせてくれた祖父に改めて感謝の気持ちを感じ、カツラは帰省のための準備に取り掛かった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「いいところだな。時間がゆったりしている感じがする」 「田舎っていいたいんだろ。ここはのどかすぎるから」 「いやっ、そういう意味じゃ...」 慌ててとりつくろうタイガがかわいらしくカツラは優しく微笑んだ。タイガに悪気がないのはわかっていた。少しからかってやったのだ。 「少し車を走らせたら繁華街に出ることもできる。この辺の若者はだいたいそこで楽しんでるさ。ビーチもあるから、ここにいる間に行けたら行ってみよう」 タイガとカツラはまさに今、カツラの祖父の家へと向かっていた。 飛行機を降り、レンタカーで自宅まで向かう。地元のことについてあれこれとタイガに説明をするカツラの横顔は少し楽しそうだ。 タイガはここにきてさすがに緊張してきた。カツラに祖父について尋ねても会えばわかるというだけで、その人柄が全くつかめていないからだ。 なるべく大人しくしておこうと心に留めておく。タイガは深呼吸をそっとし自宅へと続く景色を眺めた。 自分が住んでいる◇◆◇とは異なり、ここは気温が少し高く日差しが柔らかい。バランスよく緑も残り、色とりどりのカラフルな屋根のしゃれた家々がほどよい間隔で立ち並んでいる。 この街は大きく湾曲した川を挟むように作られていているようだ。対岸側も同じような街の造りで垢抜けた街の雰囲気にタイガは目を奪われていた。自然と人工の対比が絶妙な感じなのだ。 タイガたちの車はその街並みを通りぬけ、丘の方へと向かって行く。しばらくすると美しいイチョウ並木が見えた。まるで自然にできた緑のトンネルだ。そこを通りぬけると家はポツリ、ポツリとまばらに建っている。 左手にひと際大きな木のそばに建つ家が目に入った。(ひいらぎ)の木だろうか?所々に赤い実がなりとても目立っていた。その家は街の家の特徴は残しつつもややログハウス風の作りになっていて、なかなかセンスの良い家で人目を惹く雰囲気があった。 「あれだ。なつかしき我が家」 カツラの言葉にタイガは息を飲み込んだ。カツラの祖父は学校で美術を教えている。なるほど、さすが芸術家が好みそうな家だ。どこかしらカツラのアパートと雰囲気が似ていた。自宅の敷地内に入り、カツラが車を停めた。 「ダーリン、到着だ」 カツラが微笑みながらタイガに声をかけた。 「うん。運転ありがとう」 タイガがシートベルトを外そうとすると、カツラが顔を寄せキスをしてきた。もちろんタイガは素直に唇を重ねる。カツラから舌を絡め口の中を激しく貪られる。タイガも気づけばカツラと同じようにカツラを激しく貪っていた。しばらくしてようやっと唇を離す。 「悪い、ほしくなった」 「カツラ」 タイガはカツラにほしいといわれ、自分の分身が場所もわきまえずに反り立つのがわかった。 「じゃ、行くか」 しかしけしかけたとうのカツラはタイガのそんな様子に全く気付くことなく、さっと車から降りてしまった。 タイガも仕方なくのろのろと車から降りる。こんな場所で愛し合うわけにはいかないのだ。今からカツラの祖父と対面する。荷物を手に持ち行儀よくカツラのあとに続く。 「ただいまぁ」 「カツラが玄関のドアを開けながら中にいる人物に声をかけた」

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