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第183話 15-9

カツラの地元にきてまだ数時間だけしかたっていないが、最近カツラがエロすぎるとタイガは妙な胸騒ぎを感じていた。自分にも責任はあるのかもしれないが。 汗を流しサニタリールームで服を着る。タイガが何気なくカツラに視線を移すと、カツラの下着はまたもTバッグだった。タイガの視線がカツラの下半身に釘付けになる。 それは先ほどカツラがはいていたTバッグとセットのものだ。今回は白いTバッグで、カツラ自身の形がはっきりと透けていた。白色のせいか変な背徳感も感じ、余計にいやらしく見える。白い紐のような布が食い込んだ尻は上向きにあがっていて、とても官能的で見る者の欲求を募らせる。その割れ目を開かせ秘密の花園を覗きたい気分にさせるのだ。 動きを止め押し黙って自分を見つめるタイガの視線に気付いたカツラがニヤリと微笑んだ。 「どうした?」 「どうしたって?」 タイガはカツラのそばへ行き、むき出しになった豊満な白い尻を遠慮なく両手でわしづかみにした。 「どうして?」 瞳を濃くしてタイガがカツラに尋ねた。 「え?」 「どうしてまたこんなのはいてるんだ?」 タイガは言いながらカツラのTバッグの腰の部分の紐に指をかけた。 「お前、好きだろ?それに確かに楽なんだ。蒸れないしな」 「ずっとはくつもり?」 「タイガが用意したものははく。ずっとかはわからないけど」 タイガは黙ってカツラを見つめた。 「タイガ以外に見せるわけじゃないんだから」 カツラは言いながらタイガの手から抜けズボンをはき始めた。むきだしの桃のようなたわわな尻がズボンでようやくその姿を隠す。細身のズボンはカツラの尻の形を綺麗に表していた。シャツを着、その裾でようやく尻が隠れる。 タイガはカツラの尻が無事に隠れたことを確認してから自分の服に袖を通した。 カツラは変に抜けたところがあるから自分が気を付けなければとタイガは気持ちを引き締めた。タイガはいったい何を危惧しているのか。そんなことなど起こるはずがないが、タイガはカツラを愛するあまりとても神経質になっていた。 ダイニングに行くとローストチキンのいい匂いが充満していた。 カツラがタイマーを確認する。 「そろそろだな」 コンロ下のオーブンを開け焼き具合を見る。 「ソロは何か他に用意しているかもしれないけど。せっかくだからなにか作るか」 カツラは冷蔵庫の中を見、材料になりそうなものを手際よく出していく。 「タイガ、これ」 カツラはタイガに指示を出し、二人で夕飯の準備に取りかかった。 カツラは要領がよく指示も的確なので、あれこれと話をしながらの準備は楽しかった。あっという間にソロが帰宅する時間になった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 帰路、ソロは一人物思いに (ふけ)っていた。 タイガの第一印象。 真面目、固い、いいとこ育ちのお坊ちゃん。男らしい体躯。確かに見た目はパーフェクトだ。女にもてそうなのに本人は女がだめだとはもったいない。自由奔放に育ったカツラとは正反対の印象を受けた。違うからこそ惹かれ合うのか…。 話してみて。 やはり真面目。くそが付くほど。頑固、融通が利かない。そして意外にまだ幼い。カツラのことは大切に思っているようだ。それは伝わった。 ソロは数時間前に対面した孫の伴侶となったタイガのことを思い返していた。 カツラが初めて自ら求めた相手。タイガを見るカツラの目は愛しい者を見る目だった。しかも自宅でいきなりあの行為に及ぶとは。 ソロはカツラのために頼んでいた酒が急遽入ったため行きつけのバーに酒を取りに行くことにした。いつ入荷するかわからないと言われれていたが、予想外に早く入荷した。できれば来たその日に振るまってやりたいと思っていたので、急ぎ受け取りに行くことにしたのだ。 外出する旨をカツラに伝えようと階段を上がると、二人の何とも言えない喘ぎ声が聞こえてきた。驚きのあまり、一瞬足を止める。 激しく交わされる(なま)めかしい声に「こんな昼間から...。元気な奴らだ」と呆気にとられた。新婚なのだから気持ちはわかるが、カツラが恋人を自宅に招きこんな行為をしたのもソロが知る限り初めてのことだ。 声をかけようか一瞬迷ったが、せっかくのチキンが台無しになっても困ると思い、ソロは二人の声が一瞬止んだところで数分待ちドアをノックした。 カツラは普通に返事をした。 ソロはつい今しがたの情事の片鱗をおくびにも出さないカツラの声にさすが俺の孫。肝が据わっていると感心したほどだ。 もともと魅力的な容姿をしているカツラだが、今日久々に見たカツラの表情はその顔を見慣れた祖父のソロでさえドキリとするほど輝いて見えた。あの男といて幸せなんだ。 ソロはタイガのことがまだつかみ切れていなかった。行儀よく育ちのよさが出ていたが、カツラに対する強い執着のようなものを肌で感じた。少し狂気じみたもののようなものを…。何故かと聞かれたらはっきりとは答えられないが、これはソロの勘だった。 強いて言えばタイガがソロに婚姻の許しを請おうとした時。ソロや周りが反対したからといって、カツラを手放す気はないというタイガの気持ちが垣間見えたからかもしれない。 しかし、恋とはお互いがお互いに執着するものだ。カツラはタイガに夢中だ。孫の眼差しはまるで初恋の少年のようだった。カツラにとってはタイガがまさに初恋なのかもしれない。「カツラが幸せならそれでいい。そうだろ、アイリス?」ソロは心の中で今はいない娘に話しかけた。

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