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第195話 15-21
「今夜早速来るそうだ。あんたに会いたくて仕方ないんだろうな」
悶々とした気持ちでタイガはリビングでカツラの帰宅を待っていた。するとソロがルアー釣りからカツラより先に帰宅した。カツラが出かけている旨を伝えると、今夜早速その友人親子が家に来ると教えられた。
昼間、カツラはタイガを自宅に一人残し、今朝二人の情事を垣間見た友人に会いに行ってしまった。タイガも同行を希望したが、きちんと紹介したいからとカツラは一人で出かけてしまったのだ。
「幼馴染とか?」
タイガは今朝見た男の顔を思い浮かべながら至ってふつうを装いソロに尋ねた。
「そうだ。その友人がここに越してきてからの付き合いになる。中等部も高等部も一緒だった。なにをするにしても二人一緒だ。よっぽど気があったんだろうな」
ソロはキッチンで釣ってきた魚の下処理をしながら当時のことを思い出していた。
ソロにとってはゼファーも孫のような存在だ。食事を共にするのも久しぶりなので今夜は楽しい夕食になると思いながら準備を始める。
ソロはただ昔を思い出しその当時のことを淡々と話しただけであったが、このことはタイガの胸にモヤモヤとしたものを湧き起こさせた。またいつものヤキモチだ。
カツラはあまり自分から自分のことは話さない。そのため今の話は初耳であったし、仲の良い友人の存在もタイガは知らなかった。
ずっと黙ったままのタイガの様子にようやくソロが気付き、タイガの態度の変化に戸惑った。
ソロはタイガになにかまずいことでも言ってしまったかと今しがたの会話の記憶をたどる。心当たりがないソロは不思議に思いながらタイガの様子を伺っていた。
「ただいまぁ」
するとなにも知らないカツラが帰宅した。カツラはソロとタイガの姿を確信するや、すぐにタイガの暗い表情に気付いた。
「ソロ、釣りはうまくいった?」
ソロに話しかけながらもカツラはソファに腰を下ろしているタイガに歩みより、隣に座った。
そのままタイガの顔を覗き込み、タイガの髪を撫でる。
「ああ、でかいのが釣れたぞ」
「タイガ?」
キッチンで釣ってきた魚をおろしていたソロが振り向きながら言うと、カツラがタイガを気付かうようにとても小さな声でそっと語りかけていた。
「どうした?」
カツラはもう片方の手でタイガの手を握った。タイガはカツラの手を握り返している。ソロの方からはタイガの表情は見えない。カツラはタイガの耳元でなにか囁いている。
「まったくこいつらは。場所もわきまえずに...」ソロはカツラとタイガがまたいちゃつき始めたと思い、魚をおろしていた手を止めアトリエに向かうことにした。
「カツラ、魚おろせるだろ?ムニエル用にさばいておいてくれ」
「わかった」
今やカツラの意識は全てタイガにむけられていた。ソロはそんなカツラが少し心配になりながらも二人をリビングに残しアトリエへと向かった。
ソロの姿が消えたことでタイガはぼそりとカツラに尋ねた。
「友人はどうだった?」
タイガの目線は足元を見たままだ。タイガは自分でも今の態度は幼稚だとわかっていたが、どうしても感情がうまくコントロールできなかった。
「思っていた通りだった。最近空き巣が多いらしい。留守の家で若い恋人たちが逢瀬を楽しんでるんだって」
「俺たちを間違えたのか?」
タイガは信じられないという目でようやくカツラを見た。カツラの瞳は美しく、真っすぐにタイガを見ていた。
「俺たちの帰省は来週だとソロに言われたらしい。ソロは時々ぬけたところがあるから」
カツラの話を聞き、友人側の事情は理解できた。そしてカツラが時々ぬけているのも祖父譲りなのだということも。
「そいつとずっと仲良かったって?俺だってわかってるんだ。そんなことは普通のことだって。でも…」
タイガは自分の理不尽なヤキモチも理解していることをカツラに伝えたつもりだった。
「俺はもうお前のものなのに困ったやつだ」
カツラは気を悪くするわけでもなく、タイガの額にチュッとキスをした。
カプッ...
タイガの目の前に来たカツラの首元にタイガが嚙みついた。
「んっ、こらっ」
カツラがさっとタイガから身を離すと二人の目が合った。タイガの瞳は色を濃くしていた。
カツラはそのままぐいと腕を引き寄せられ、頭を掴まれ激しく唇をうばわれる。
執拗に口腔内を貪られながらカツラは恍惚な気持ちでタイガのキスに応えていた。自らも求め激しく舌を絡ませていく。お互いの唇がお互いの唾液で濡れまくったころ。ようやっと唇を離す。しばらく見つめ合うとタイガはカツラをソファに押し倒しまたキスを始めた。
「んっ、タイガ、あっ、…」
「カツラッ」
激しいキスのため、息付きの吐息が漏れる。
どれぐらいそうしていたのか、カツラの携帯のバイブが鳴り二人ともはっと我にかえる。
カツラがくすっと笑い自分の唇を舐めた。そしてタイガのぬれた唇を優しく手で拭う。二人はソファーに座り直し、カツラほ携帯に届いたメールを確認した。
「タイガ、今夜くるらしい。ゼファーが」
カツラがタイガの肩に手を置きメールの内容を伝えた。
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