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第208話 15-33

カツラとのキスでタイガはまた下半身のもう一人の自分が場所をわきまえずに起き上がるのを感じ、慌ててカツラから唇を離す。カツラは恍惚な表情でタイガを見ていた。 「タイガ…」 眠いのかカツラはそのままタイガの肩に頭を預けた。カツラのぬくもりと重みを感じタイガはほっと一息つく。そしていつの間にかゼファーが部屋にいないことに気付いた。 「カツラ、今日はもう帰ろう?結構酔っているだろ?」 「あ...、うん、そうだな」 タイガはカツラの腕を掴み、部屋から出た。階段を降りるとダイニングテーブルにゼファーがいた。 先ほどは気付かなかったが確かにキッチンとダイニングテーブルの周りには拭き残しの白い粉がまだ所々残っていた。テーブルの上にはグラスと酒が数本、最初はここで飲んでいたのかもしれない。 帰る旨を伝えるためタイガは足取りのおぼつかないカツラをリビングのソファに一旦座らせダイニングへと向かう。ゼファーは不機嫌な顔で一人酒の入ったグラスを手にしていた。タイガに気付き目だけ向けるがすぐに逸らす。 「カツラがかなり酔っているから今日はもう帰る。カツラの服は?」 「洗濯中だ」 「バスローブは後日返す」 タイガは必要なことだけ伝えカツラの元に行き玄関へと向かう。ゼファーはそんなタイガをうっとおしいものを見るような目で見ていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 気付くとカツラは自分の部屋のベッドに横になっていた。もう夕方で西日が部屋に僅かな日差しを残していた。 「あれ?なんで?」 カツラは酔ってからの記憶が思い出せずなぜ今自分がここにいるのかわからなかった。ベッドから足をおろし立ちあがろうとしたらドアが開いた。 「カツラ」 「タイガ。俺?」 「何も覚えてないのか?」 タイガはカツラの目の前に膝をつき尋ねた。彼の目は真剣だ。カツラは自分がタイガの嫌なことをなにかやらかしてしまったのではとなんとか思い出そうとした。しかし、思い出せない。ゼファーと久しぶりに旨い酒を飲んでハメを外してしまった。カツラはタイガの気持ちを推し量ろうと言葉を発する。 「俺、俺は...」 「カツラが酒癖悪いなんて知らなかった」 タイガの言葉はカツラを責めている風ではなかったが、カツラは何も言い返せず黙ってしまう。 「カツラ、シャワー浴びてバスローブ姿だったんだ」 なんだって?!カツラはタイガの言葉に心臓が止まりそうになる。今自分はいつも着ているスウェット姿だ。タイガが着替えさせてくれたということか? なんとかして記憶をたどる。パンケーキ、パンケーキを作ろうとして。それから、それから...。 カツラは視線を泳がせながら思い出すことに全神経を集中していた。ふと気づくとタイガが無表情で自分を見ていた。 「タイガ、今思い出すからっ。なにもやましいことはない。嫌いにならないで」 カツラはタイガの肘を掴み懇願した。タイガはカツラの手をそっと離し、カツラの隣に腰掛けた。カツラはタイガに拒絶されたと思ったが、タイガはカツラの肩を抱き寄せ抱きしめた。 「嫌いになんてならないよ。愛しているから。ただ、ちょっと寂しいだけ」 カツラはタイガに嫌われなくてほっとしたが、タイガの最後に言った言葉が気にかかった。 「寂しいって?」 「あいつとは本当に仲良しなんだな。当然のことだけど、信用しているし気が許せるから気も緩むんだろ」 「タイガ、ゼフは」 カツラは自分にとっての一番はタイガなのだと伝えようとタイガの顔を見た。タイガはやるせない表情をしている。 「カツラは悪くない。俺がおかしいんだ。友人なんてそういうものだし」 「やめてくれ。俺はおまえさえいたらいい。タイガが一番大切なんだ」 カツラはタイガに抱きついた。 タイガにこんな表情をさせているのが自分だという事実は受け入れがたかった。タイガが自分を束縛することについてカツラはなんの不満もない。そのことをよくないことだとタイガが自分を責め疲れ、カツラから離れていってしまわないかと心配でならなかった。

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