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第220話 15-45
こいつ、今なんて言った?3Pって言ったのか?3Pってアレのことか?誰と?カツラと俺とこいつとってことか??
タイガは思考が追いつくのに時間がかかった。そしてようやく目の前の男が何故そんなことを言ったのか理由が思いあたった。過去、カツラと関係があったからだ。肉体関係が。
途端にドス黒い嫉妬が芽生える。目の前の男は自分と同じようにがっしりとした体つきだ。カツラのタイプなのだろうか。タイガは魅力的な笑顔を向ける男を無意識に値踏みしていた。
そしてまた一つ心にひっかかっていることに気づいた。こいつは今「3P」と言ったのだ。カツラはその経験があるということか?
カツラが二人の男に犯されている情景が脳裏に一瞬よぎる。タイガは嫉妬で軽い吐き気と頭痛がした。
「ノーザ。彼は俺の伴侶なんだ。結婚したんだ。じゃぁな」
落ち着いたカツラの声にタイガは現実に引き戻される。
「えっ!?ちょっ…」
予想外のカツラの報告にノーザはなにか言いたげだ。しかしノーザがこれ以上なにか話すのを遮るようにカツラは向きを変えタイガの腕をとった。
「タイガ、行こう」
カツラの態度に驚きのあまり言葉を失ったノーザを一人その場に残し、カツラとタイガは足早に立ち去った。
カツラはタイガの顔を見れない。カツラが腕を取りタイガを引っ張る感じでゼファーが待つ席へと急ぐ。タイガはその間だまりこくったままだ。
カツラとタイガの姿を見つけ、ゼファーが声をかける。
「混んでたのか?」
「ああ、まあな。ほら、タイガ。ゼファーのもあるから」
カツラは何事もなかったのように話しをするが、タイガは渡されたホットドックを手にさっきから一言も話さない。微動だにしないそんなタイガの様子にゼファーが気付いた。
「どうした?腹でも痛いのか?」
「3Pって…。カツラは経験があるのか?」
タイガは我慢が出来ずにカツラにストレートに尋ねた。コーラを飲んでいたカツラの動きが止まる。ゼファーはほおばっていたホットドックを喉に詰めるところだった。
「ゲホッ、ゲホッ、お前急になに言ってんだよ?」
せき込みながらゼファーはタイガに突っ込むがタイガはカツラから目線を離さない。
「カツラ?」
タイガは容赦なくカツラをまっすぐに見つめたまま質問に答えるよう圧を加える。
「そんなのっ!あるわけないだろっ」
「じゃぁさっきのは...」
「誘われたことはある。でも実際にやったことはない!」
「誘われたって、さっきの奴?あいつとは付き合ってたのか?」
「違う。つき合ってない。その...。関係はもったけど。そういうのじゃない」
タイガは以前カツラから一夜だけの関係の者もいたという話を聞いたことがあった。その内の一人と偶然にも再会したということか。
「おいおい。どうなってるんだよ?カツラの昔の男と会ったのか?」
二人のやり取りを聞いてゼファーが間に割って入る。カツラはタイガにならなんでも素直に答える。ゼファーはこれはいい機会とカツラにこれまでの男性経験を問いただしてみることにした。
「そいつとはどこで出会ったんだ?」
「どこだっていいだろ。とにかく変なことはしていない」
カツラはゼファーの質問にはうるさいやつだと言わんばかりに軽くあしらう。
「不思議なんだ。あんなことを誘うなんて」
タイガはまだ納得していない。タイガにはカツラの対応はガラリと変わる。タイガに言い聞かすように言葉を選びながら慎重に話す。
「彼の上司が…。ノーザに…、さっきの奴だけど…、声をかけたから」
「上司?」
新たな登場人物にタイガが疑問を呈する。
「カツラ、まさかノーザって奴の上司とも寝たのか?」
カツラが言った言葉の意味を汲み取ったゼファーが追い打ちをかけるように尋ねる。恐らくタイガも同じことを思っているはずだ。
「リゾート地に旅行に行ったときに知り合ったんだ。レジャー施設を扱う会社社長と知り合って…。俺はその時かなりその...。遊んでたんだ。若かったしな」
「女遊びでなくて男とか?」
ゼファーがカツラに確認する。うざい奴だという目でカツラはゼファーを見るが、タイガが無言で答えを待っているので仕方なく答える。
「たまたまそうなったんだ。バーで知り合ってそういう流れに」
「マジか!!」
カツラの告白にゼファーが絶句する。
昔から交際に関しては適当な奴だとは思っていたが、同性のハードルがなくなると異性相手と同じく手あたり次第とは。ゼファーは二人のやり取りを見守る。
「もちろん本気じゃない。ただの遊びだ。ノーザともなんとなく関係を持って。そのことが社長の耳に入ってそれなら三人でと声をかけられたんだ」
カツラの話にもタイガは無言だ。カツラはじわりと嫌な汗をかく。
「もちろん断った。タイガ。あの頃の俺は今と違う。関わる相手に気持ちなんてほとんどなかった」
カツラは目線は真っすぐタイガに向けたまま、足でゼファーをこつく。助けろと言っているのだ。ゼファーはカツラがこんなに必死に恋愛相手に取り繕っているところを見たことがなかった。カツラが慌てふためく様は面白くもう少し見ていたかったが、カツラはタイガにゾッコンだ。親友のまたあんな暗い顔は見たくないゼファーは一肌脱ぐことにした。
「カツラは昔からこんな感じだぜ。さすがに学生時代は一夜限りとかはなかったはずだけど。恋人の入れ替わりは激しかった。過去の話だ。お前だってそれなりに経験あんだろ?」
「タイガ…」
ゼファーのフォローにも微動だにしないタイガにたまらずカツラが声をかける。
「別に怒ってないし、カツラを困らせるつもりはない。ただ気になっただけで」
タイガはあのノーザとかいう男の態度が嫌だった。今でも3Pを求めてくるぐらいなのだ。カツラとのセックスが余程よかったに違いない。
「過去は過去。大切なのは今だ。だいたい、カツラ相手にいちいちそんなことで目くじらたててたら身が持たないぜ?」
他人事のように言い放つゼファーをタイガが睨む。しかしゼファーはタイガにとっておきの一言をお見舞いした。
「関係持った奴なんて、あと何人いると思ってんだよ?」
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